勤務状態の悪い1人だけを1年契約を理由に自動的退職にしたいが、可能か【平成16年:事例研究より】

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当社では、中途採用者の採用に当たっては、準社員と称し、1年の契約期間を定め、1年経過後は黙示の更新により期間の定めのない契約へと移行させています。

準社員として採用した1人は勤務状態が思わしくないので、契約期間の満了時に、黙示の更新を行わずに退職扱いにできないかと考えています。

1年契約を理由に自動退職にできないでしょうか。

【北海道・O社】

期間の定めがある労働契約の場合には、その契約期間が満了したときは、自動的に労働契約は終了し、解雇の問題は生じません。

行政解釈は「一定の期間又は一定の事業の完了に必要な期間までを契約期間とする労働契約は、他に契約期間満了後引き続き雇用関係が更新されたと認められる事実がない限りその期間満了とともに終了する」(昭23・1・16基発第56号、昭63・3・14基発第150号)としています。

しかし、ご質問のように1年の労働契約を締結しても、1年経過後は黙示の更新により契約期間の定めのない労働契約へと移行させている場合には、契約が継続することを予定しているものであり、1年経過した後も労働者は引き続き雇用されることを期待するようになっていますので、1年の契約期間満了をもって労働契約が自動的に終了すると解すことはできません。

就業規則で準社員として1年の契約期間を定めていても、1年経過後はすべて黙示の更新により、期間の定めのない契約に移行させている実情があるのですから、契約期間の満了時に、黙示の更新を行わず、退職とするのは労働契約の自動的終了ではなく、解雇といわざるを得ません。

期間の定めがある労働契約の場合、その期間が満了したときに、規定上も実際の運用上もきちんと辞めさせるときは、契約期間満了に伴う自動的な終了で、何ら問題が生じないのですが、期間の定めがある契約を反復更新したり、黙示の更新により期間の定めのない契約へと移行させている場合は、労働契約の自動的終了事由としての効力をもたないことになります。

したがって、1年の契約期間をもって労働契約を終了させるには、労基法第20条により、その少なくとも30日前に解雇予告をするか、解雇予告手当(平均賃金の30日以上)を支払わなければなりません。

なお、契約期間満了後労働者が引き続きその労務に服する場合は、民法第629条(黙示の更新)により前の契約と同一の条件をもって期間の定めのない契約が成立したものと推定されますから、その後に契約を終了させようとするときには解雇となります。

【平成16年:事例研究より】