部長兼任のまま取締役に就任、被保険者資格と失業しだときの給付はどうなるか【平成4年:事例研究より】

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当社では現在、代表取締役2人を含めて取締役10人を置いていますが、今度、取締役の1人が退任したことに伴い、総務部長が部長兼任のまま取締役に就任しました。

部長としての給与は従来どおり支給し、取締役報酬を上乗せして支給することになります。

この場合、新たに取締役となる総務部長の被保険者資格や、失業したときの給付はどうなるのでしょうか。

【大阪・S社】

雇用保険は雇用労働者を対象とするものであり、請負事業を行う者や、委任を受けて仕事を行う者等労働者性のない者は、雇用保険の被保険者となりません。

会社と取締役、監査役等との関係は雇用契約ではなく、委任契約に基づくものですから、取締役等はその限りでは雇用労働者には該当せず、被保険者とはならないことになります。

ただし、会社を代表しない取締役(株式会社にあっては代表取締役以外の取締役、有限会社にあっては会社を代表すべき取締役以外の取締役)にっいては、同時に会社の部長、支店長、工場長等会社の従業員としての身分も併せて有し、従業員としての就労と取締役としての職務の双方を行う場合があるため、このような場合は、当該取締役について労働者的性格が強いかどうかを判断し、会社との間に雇用契約があると認められる者は被保険者として取り扱うこととされています。

労働者的性格が強いかどうかについては、報酬支払いの面、その者の就労の実態、就業規則の適用状況等を考慮して、総合的に判断されます。

例えば、部長、支店長、工場長等会社の従業員としての就労に対して支払われる賃金が役員報酬より多額であり、就労実態も従業員とおおむね同様であるなど、労働者的性格が強い場合には、被保険者として取り扱われることになるわけです。

これに対し、株式会社の代表取締役、有限会社の会社を代表すべき取締役、合名会社や合資会社の代表社員等の会社の代表者については、雇用関係ということはあり得ないので、一律に被保険者になりません。

ご質問の場合については、上記のような観点から被保険者となるかどうかを判断することになりますが、もし被保険者とならないと判断される場合は、取締役に就任する時点で被保険者資格を喪失することになりますので、事業主は取締役に就任した日の翌日から10日以内に、その事業所の所在地を管轄する公共職業安定所の長に雇用保険被保険者資格喪失届を提出しなければなりません。

この場合、被保険者でなくなったことの原因は、離職として扱われますので、本人が雇用保険被保険者離職票の交付を希望しない場合を除き、事業主は雇用保険被保険者離職証明書を添付する必要があり、安定所からは雇用保険被保険者離職票が交付されることになります。

次に、取締役に就任した後も労働者的性格が強く、引き続き被保険者となると判断される場合は、取締役としての地位に基づいて受ける役員報酬が、保険料およびその者が失業した場合における失業給付の算定の基礎となる賃金に含まれるかどうかが問題となりますが、雇用保険において賃金とは、労働者としての身分について労働の対象として事業主から支払われた部分に限られますので、役員報酬部分はこれに含まれません。

したがって、このような場合には、部長、支店長、工場長等会社の従業員としての身分について、労働の対償として支払いを受けた賃金に基づいて保険料および失業した場合において支給される基本手当の日額が算定されることになります。

【平成4年:事例研究より】

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