火災で滞納の恐れのある場合、保険料払わないと費用徴収か【平成15年:事例研究より】

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工場等が火災等の災害により事業活動が順調に行われず、そのため労働保険料も法定の納期限までに完全に納付できなくなったとします。

そのような場合にでも滞納すれば延滞金を徴収されたり、滞納期間中に通災や労災が発生すれば費用徴収のおそれがあります。

そこで、そのような場合には事業主としてはどのようにすればよいのでしょうか。

【神奈川 E社】

労働保険料の徴収等についても準用される国税通則法第46条第1項をみますと、「震災、風水害、落雷、火災その他これらに類する災害」により、その財産につき相当な損害を受けた場合には、その損失を受けた以後1年以内に納付すべき分について、2月以内に申請があれば、1年以内の期間を限り納付を猶予することができるとあります。

この納付の猶予を受けるためには申請することが必要です。

申請する相手は、国税については税務署長ですが、労働保険料の納付の猶予については、申請する相手は労働基準監督署長ではなく、歳入徴収官である都道府県労働局長です。

ご質問にある災害が具体的にはどのような災害なのかわかりませんが、とにかく災害であればまずこの納付の猶予制度を考えてみるべきでしょう。

もし、猶予が認められますと、その猶予期間中については延滞金は徴収されません(労働保険徴収法第27条第5項4号、昭62・3・26労徴発第19号)。

費用徴収の対象にもなりません(昭47・9・30基発第643号)。

なお、次の各号のどれかに該当する場合には、これも申請により、納付することができない限度で1年以内の期間を限り延長されます(国税通則法第46条第2項)。

一 納付者がその財産につき、震災、風水害、落雷、火災その他の災害を受け、又は盗難にかかったこと。

二 納付者又はその者と生計を一にする親族が病気にかかり、又は負傷したこと。

三 納付者がその事業を廃止し、又は休止したこと。

四 納付者がその事業につき著しい損失を受けたこと。

五 前各号の一に該当する事実に類する事実があったこと。

以上の場合にも猶予が承認されますと、延滞金(ただし、三、四、五の各号は納付が困難な限度)や費用徴収は、その分について関係がなくなります。

延滞処分の停止:国税徴収法第153条第1項の規定により、次に該当する事実が認められるときは、滞納処分の執行を停止することができるとあります。

一 滞納処分を執行することができる財産がないとき。

二 滞納処分を執行することによってその生活を著しく窮迫させるおそれがあるとき。

三 その所在及び滞納処分を執行することができる財産がともに不明であるとき。

執行の停止は職権により行われますが、この場合にも延滞金の徴収は行われません(労働保険徴収法第27条第5項4号、昭62・3・26労徴発第19号)。

もちろん費用徴収も行われません(昭47・9・30基発第643号)。

なお、延滞金については、納付委託(証券で保険料を納付する場合)その他一定の場合については減免されることがあります(昭62・3・26労徴発第19号)。

換価の猶予:延滞処分自体は停止されませんが、換価することだけが猶予される場合があります。

つまり、差押さえは行ってもそれを公売することを猶予するということです。

国税徴収法第151条第1項をみますと、次の各号の一に該当すると認められる場合に、納付すべき者が納付することについて誠実な意思を有すると認められるときは、1年を超えない期間換価を猶予することができると規定されています。

一 その財産の換価を直ちにすることによりその事業の継続又はその生活の維持を困難にするおそれがあるとき。

二 その財産の換価を猶予することが、直ちにその換価をすることに比して、滞納に係る保険料から最近において納付すべきこととなる保険料の徴収上有利であるとき。

これが職権で認められると換価は猶予されますが、延滞金については影響がなくて徴収され、費用徴収については適用がないので心配ないということになります(昭47・9・30基発第643号)。

以上のとおりで、なお具体的事案の詳細については都道府県労働局の総務部に行かれて、担当者に会ってよくご相談されるとよいと思います。

【平成15年:事例研究より】