当社の従業員Aは私病のため長期間休業していましたが、快方に向かってきましたので、一応出勤することになりました。
しかし、全快したわけではありませんので週に何日かの通院が必要です。
通院の日は午前中病院に行き、午後から勤務に就きたいといっています。
半日労務不能の場合、健康保険の傷病手当金の支給はどうなるのでしょうか。
【静岡・T産業】
健康保険の傷病手当金は、1.業務外の傷病の療養のため、2.労務に服することができず、3.そのため報酬が受けられないとき、4.3日間の待期期間をおき、第4日目から支給されます。
労務に服することができないこと、労務不能が傷病手当金の支給要件の一つとなっていますが、労務不能の認定基準は、「必ずしも医学的基準によらず、その被保険者の従事する業種の種別を考え、その本来の業務にたえうるか否かを標準として社会通念に基づき認定する」(昭31・1・19保文発第340号)とされており、労務とは今まで従事していた労務のことであって、他の軽い仕事にたえられないときは労務不能となります。
しかし、健康保険でいう労務不能とは、全く労務に服さないことをいうのであって、短時間でも就労し、または服することが可能な他の軽易な業務に従事すれば、傷病手当金は支給されません。
行政解釈は、「医師の指示又は許可のもとに半日出勤し、従前の業務に服する場合は支給されない。
また、就業時刻を短縮せず配置転換により同一事業所内で従前に比しやや軽い労働に服する場合は支給されない」(昭29・12・9保文発第14236号)、「午前中のみ出勤し従前の業務に服する場合は支給されない」(昭32・1・19保文発第340号)としています。
傷病手当金は全く労務に服さない場合に支給されるものですから、一応出勤し、通院日は午前中通院して午後から勤務し、半日労務不能であったとしても傷病手当金は支給されません。
半日でも勤務すれば労務不能と認められないからです。
傷病手当金は、1日につき標準報酬日額の6割とされていますが、半日労務不能ということで、その3割が支給されるということもありません。
また、通院の日は半日勤務のため、受けられる報酬が傷病手当金の額より少なくても、差額支給ということもありません。
【平成4年:事例研究より】