出産手当金を受給中の女子が病気にかかる、傷病手当金も併給できるか【平成4年:事例研究より】

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健康保険では、女子被保険者がお産のため休業する場合、分娩の日前42日、分娩の日以後56日以内で出産手当金が支給されますが出産手当金が受けられる期間中に病気にかかり、その病気でも療養のため労務不能という場合には、傷病手当金も支給されるのでしょうか。

出産手当金と傷病手当金は併給され、両方が受けられることになるのでしょうか。

【栃木・H社】

健康保険法第54条の規定により、出産手当金の支給が行われる場合には、その期間傷病手当は支給されません。

出産手当金は、被保険者が分娩したとき、分娩の日前42日(多胎妊娠の場合は70日)、分娩の日以後56日以内において労務につかなかった期間に対して支給され、産前産後の休業期間における収入の喪失または減少を補い、休業に伴う経済的不安から女子被保険者を保護するものです。

一方、傷病手当金は、傷病の療養のため労務不能となり、収入の喪失または減少した場合に、これを補って被保険者の生活の安定を図るものです。

出産手当金も傷病手当金も、分娩と傷病とその原因こそ違いますが、ともに報酬(賃金)に代わって支給するという生活保障的な性格のものです。

したがって、どちらか一方を支給すればその目的が達せられますので、健康保険法第54条で「出産手当金の支給をなす場合においては、その期間傷病手当金はこれを支給せず」と規定し、出産手当金の支給事由が生じていれば、出産手当金を優先的に支給し、その間傷病手当金は支給停止しているのです。

ご質問の場合のように、出産手当金を受給している期間中に、傷病手当金を支給すべき状態になった場合には、出産手当金の支給期間が経過するまでの間は傷病手当金の支給は行われません。

出産手当金の支給期間が経過して傷病手当金の支給が始められたとき、その支給開始の日が支給をはじめた日となり、傷病手当金の支給期間はその日から1年6ヵ月です。

また、傷病手当金を受けている期間中に、出産手当金を支給すべき事由が生じた場合には、傷病手当金の支給は停止されて出産手当金の支給が行われ、出産手当金の支給期間が満了した後、なお傷病手当金を支給すべき状態であれば、傷病手当金が支給されます。

この場合の傷病手当金の支給期間は、出産手当金を受ける前にはじめて傷病手当金が支給さ・れた日から1年6ヵ月です。

【平成4年:事例研究より】