傷病手当金受給者の妻が生活費の補てんで内職、手当金は減額されるか【平成4年:事例研究より】

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当社では欠勤した場合、給与は支給されず、病気欠勤のときは健康保険から傷病手当金を受給するようになっています。

現在、病気療養中で傷病手当金を受給している者が、傷病手当金だけでは生活できないので、妻の内職を手伝って生活費を補っているという報告を受けました。

内職をして内職収入を得たということで、傷病手当金が減額されることはありませんか。

【福島・T社】

健康保険の傷病手当金は、私傷病の療養のため労務不能となり、収入が喪失または減少した被保険者の生活の安定を図るために支給されるものです。

つまり、傷病手当金を受けられるのは、療養のため労務に就くことができない場合で、しかもその間会社から報酬(賃金)の支給がない場合です。

傷病手当金は、報酬に代わって支給するという性格のものですから、傷病手当金の支給が可能な状態であっても、本来の報酬が支給される場合には支給されませんし、支給される報酬が傷病手当金の額より少ない場合は差額を支給することにしています(健保法第58条)。

健康保険でいう報酬とは、被保険者が労務の対償として受ける賃金、給料、俸給、手当などをいい、事業主が報酬として支給されるものを指しています。

現に労務が提供され、その労務の提供に対してという狭い意味ではなく、労務の提供がなくても給与規定などに基づいて支給されるものであれば報酬に含まれます。

内職収入は、事業主が支給するものでありませんから報酬に入りません。

一方、労務不能の基準は、「必ずしも医学的基準によらず、その被保険者の従事する業務の種別を考え、その業務にたえうるか否かを標準として社会通念に基づき認定する」(昭31・1・19保文発第340号)とされ、従前の労務に服することができないような状態であれば、労務不能とされます。

したがって、家の仕事を少し手伝った場合であっても、病気の状態が職場における労務不能の程度であれば、傷病手当金は支給されます。

妻の内職を手伝って、内職収入を得たとしても傷病手当金は減額されることはありません。

しかし、内職がどの程度の労働力を要するものであるか、また、それによって果たして労務不能であるかが問題になることがあります。

内職の程度の問題であって、場合によっては労務可能になったと判断されることもあります。

労務可能なら、傷病手当金は打ち切られます。

【平成4年:事例研究より】