被保険者資格1年未満の退職者になぜ継続適用が認められないのか【平成4年:事例研究より】

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当社では、臨時従業員も2ヵ月以上採用する場合は、健康保険に加入させています。

たまたま採用2ヵ月の途中で臨時従業員が発病し、健康保険で治療をはじめました。

入院治療の必要があるとのことで、自然退職の形となります。

健康保険の加入者が1年未満で退職した場合、なぜ健保の継続適用(退職前に発病したもの)が認められないのでしょうか。

【東京・H工業】

健康保険では、適用事業所に使用される者は原則としてすべて被保険者になりますが、臨時に使用される者で、1.2ヵ月以内の期間を定めて使用される者、2.日々雇い入れられる者一一などは被保険者となりません。

ご質問の臨時従業員は、臨時的雇用の形で使用されていても、2ヵ月以上雇用するものですから、雇い入れの当初から被保険者になります。

健康保険の保険給付は、原則として現に被保険者である者に対してだけ行われます。

この点「被保険者の業務外の事由による疾病、負傷もしくは死亡または分娩に関し保険給付をなす」(健保法第1条)、「被保険者等の疾病または負傷に関しては左に掲げる療養の給付をなす」(健保法第43条)、「被保険者が療養のため労務に服すこと能はざるときは……傷病手当金として。……支給す」(健保法第45条)などと規定ざれ、被保険者に対して給付されるのが原則です。

したがって、退職して被保険者でなくなれば、保険給付を受けることができなくなります。

しかし、退職(資格喪失)と同時に退職の際に受けていた保険給付まで打ち切ってしまうのは、被用者の保護に欠けますし、健康保険の効果も減殺することになりますので、退職により被保険者の資格を喪失した後も一定の要件を備える場合には保険給付を行う途が開かれています。

これが資格喪失後の継続給付です。

継続給付を受けるには、被保険者の資格を喪失した日の前日まで継続して1年以上被保険者であったことが必要です。

ご質問では、なぜ1年未満の者は継続給付を受けられないか、ということですが、資格喪失後の継続給付は例外的なものですから、受益者を一定期間被保険者であった者に限定するのもやむを得ないことと考えられます。

なお、2ヵ月以上の被保険者期間を有していれば、任意継続被保険者になれます。

任意継続被保険者になりますと保険給付は一般の被保険者と変わりありませんが、保険料は全額自己負担しなければなりません。

【平成4年:事例研究より】