定年退職で資格を喪失、妻の病気に継続療養は可能か【平成4年:事例研究より】

トップ » 社会保険 » 健康保険とは

従業員Yは、定年(60歳)退職となります。

その妻は、現在、病気のための健康保険で治療しています。

退職すれば、健康保険は切れますが、妻の病気の治療はどうなるのでしょうか。

また、健康保険では家族が死亡した場合、家族埋葬料が支給されますが、退職後に妻が死亡した場合、家族埋葬料の支給はどうなるのでしょうか。

【大阪・M社】

健康保険の被保険者の家族(被扶養者)に対する保険診療(家族療養費)にも、資格喪失後の継続療養があります。

被保険者が退職により被保険者資格を喪失した際に、家族が保険診療を受けていれば、その病気に限って、退職後も引き続き保険診療が受けられます。

これを受給するには、被保険者の資格を喪失した日の前日まで継続して1年以上被保険者であったことが必要です。

つまり、家族も被保険者が資格喪失後の継続療養を受けると同じ条件を満たせば、退職後も継続して保険診療を受けることができるわけです。

家族が保険診療を受けられる期間は、同一の傷病またはこれによって発した疾病について家族療養費の給付開始日(初診日)から5年間です。

夫は定年退職ですから、退職して被保険者の資格を喪失されたとき、被保険者期間は継続して1年以上あると思われます。

そして、資格喪失の際に、被保険者である奥さんは保険診療を受けておられますから、退職されても、奥さんは現在の病気について、初診日から5年間は継続療養として保険診療を受けることができます。

家族が資格喪失後の継続療養を受ける場合も、資格喪失の日から10日以内に「継続療養受給届」を社会保険事務所に提出し、「継続療養証明書」の交付を受け、これを医療機関に提出して受けます。

健康保険では、被扶養者が死亡した場合に、被保険者に対し家族埋葬料が支給されます。

奥さんが継続療養中に死亡された場合、被保険者でなくなった後の死亡ですから、家族埋葬料は支給されません。

奥さんは、被保険者であったYさんに、その資格喪失前から引き続き扶養されていたとしても、Yさんが被保険者でなくなった後は、奥さんは被保険者ということにならないからです。

たとえ、家族療養費の継続給付を受けていても、Yさんが被保険者でなくなった後の奥さんの死亡についでは、家族埋葬料は支給されません。

【平成4年:事例研究より】