地方出身の独身者が入院、家族のいる田舎での治療に交通費は支給されるか【平成4年:事例研究より】

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当社の従業員が私傷病のため入院しています。

まだ独身で家族と離れ単身で上京していますので、何かと不便で田舎に帰り、田舎の病院で治療したいといっています。

健康保険には移送費というものがあるそうですが、転医できる状態になって田舎の病院に転医する場合、それに要する交通費(鉄道賃)は、健康保険から支給されるのでしょうか。

【東京・K社】

健康保険の移送の給付は、被保険者が傷病にかかり、入院治療を必要とする場合や転医せざるを得ないときに、その病院まで歩行することが著しく困難なために自動車、列車などで運搬した場合、保険者(社会保険事務所または健康保険組合)の承認によって支給される給付です。

その内容は、自動車、汽車、電車などの交通機関を利用したときはその運賃、人夫を雇って担架で運んだときは、その人夫の賃金、手当、移送の途中で医師、看護婦の付添いを要したときはその費用も含まれます。

移送は、あくまで療養上必要なものに限られ、しかも保険者がその必要を認めたものに限って支給されます。

保険者が承認するに際して、次の承認要件によりその可否が決められます。

1.移送は、患者を診療した医師の指示により行われたものであり、かつ、原則として保険医療機関に収容することを目的としてなされたものでなければならないこと。

2.病状が、通常の交通手段(バス、電車、汽車)により、医療機関に赴くことを不可とする場合であること。

3.移送に関する医師の指示、移送に利用される交通手段等について客観的にその妥当性が認められること。

移送の給付を受けるには、原則として主治医の診断書を添えて移送承認申請書を提出して、保険者の承認を受ける必要があります。

ただし、やむを得ない事由があるときは、事後においても必要と認められるものは承認されます。

移送費はいったん被保険者が支払い、後で療養費払いの形式で現金給付されます。

保険医療機関の選択は患者の自由ですから、患者の都合によって転医することも自由です。

したがって、田舎の病院に転医することも可能です。

しかし、その転医は療養上必要とするものではなく、患者の都合で田舎へ帰りたいため転医するものですから、転医に要する費用(列車などの運賃)は、健康保険から支給されません。

【平成4年:事例研究より】