出産当日は産前、産後のいずれに含めるか【平成4年:事例研究より】

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健康保険では、女子被保険者がお産した場合、産前42日、産後56日の出産手当金が支給され、出産当日は産後の期間に含まれています。

一方、労基法では、産後8週間が就業制限期間とされ、出産当日は産前の期間に含まれると聞きました。

出産当日の扱いの、違いにより、出産休暇日と出産手当金の支給される日が1日ずれてしまうのではないでしょうか。

【大阪・H社】

健康保険では、被保険者が分娩したとき、「分娩の日前42日(多胎妊娠の場合においては70日)、分娩の日以後56日以内において労務に服せざりし期間」出産手当金を支給すると規定(健保法第50条)しており、出産当日は産後の期間に含まれています。

したがって、分娩の日前42日には分娩の日は入らず、分娩の日の前日から起算されます。

分娩の日以後56日は、分娩の日から起算されます。

一方、労基法では、「6週間(多胎妊娠の場合にあっては10週間)以内に出産する予定」、「産後8週間」を規定(労基法第65条)され、出産予定日は産前6週間に合まれます。

「産後8週間」は民法の期間の計算方法により行われ、初日不算入の原則により、出産日の翌日から起算されます。

この点、行政解釈も、「出産当日は産前6週間に含まれると解してよいか」、「見解のとおり」(昭25・3・31基収第4057号)としています。

出産当日は、産前の期間に含まれます。

労基法では、出産当日は産前の期間に含まれると解されているのに対し、健康保険法では分娩の日は産後の期間に含まれていますので、お説のとおり産後8週間の就業制限期間と分娩の日以後56日の出産手当金の支給期間が1日ずれてしまうことになります。

つまり、就業制限期間より1日早く出産手当金の支給が打ち切られてしまうわけです。

就業制限期間と出産手当金の支給期間が一致しなくても、法律上、規定が異なる(労基法上の就業制限期間と健康保険の出産手当金の支給は別個の制度)ので、現在のところ調整の方法はなく、やむを得ないものと考えられます。

実務上も、出産手当金が支給されない日が1日生ずるだけですから、それほど問題はないようです。

それに、産後6週間経過後は、請求を条件として医師が差し支えないと認めた業務に就業可能で、この場合には出産手当金は打ち切られますので、必ずしも期間満了までに受給するものでもありません。

【平成4年:事例研究より】