従業員Aが、このほど妻の実母を引き取り、同居するようになったということで、妻の母を健康保険の被扶養者にしたいと申し出てきました。
ところが、A夫婦は共働きで、どちらも健康保険の被保険者となっています。
妻の実母ですから、妻の方で被扶養者となるのではないかとも考えられますが、Aの被扶養者とすることができますか。
【東京K社】
妻の母は、被保険者Aの3親等内の親族に該当しますから、被保険者Aと同一の世帯に属し、被保険者Aによって生計を維持されていれば、Aの被扶養者となることができます。
被保険者の直系尊属、配偶者、子、孫、弟妹以外の人については、生計維持の要件のほか、被保険者と同一の世帯に属していることが要件となっています。
夫婦共働きでどちらも健康保険の被保険者になっているのであるから、妻の母は妻の方で被扶養者となるのではないかということですが、必ずしも妻の方で被扶養者となるとは限りません。
ご質問の場合のように、夫婦共働きでどちらも被保険者となっており、一つの家庭に被保険者が2人いる場合、同居の妻の母をどちらの被扶養者として取り扱うかについては、夫婦の収入の多少などを基準として判断されます。
夫婦共同扶養の場合の被扶養者の認定についてという通達が出されており、「被扶養者とすべき員数にかかわらず、年間収入(当該被扶養者届が提出された日の属する年の前年度分の年間収入とする。
以下同じ)の多い方の被扶養者とすることを原則とすること」(昭60・6・3保発第66号、庁保発第22号)と示されています。
したがって、A(夫)の年間収入が妻より多ければ、同居の妻の母はAの、被扶養者となります。
それとは逆に妻の年間収入がAを上回っていれば、妻の方で被扶養者にすることができます。
ご質問では、妻の母に収入があるかどうか明らかではありませんが、被扶養者となろうとする妻の母に収入がある場合には、その年間収入が110万円未満(60歳以上の老年者の場合は160万円)未満で、かつ、被保険者の収入の2分の1未満でなければなりません。
この年間収入は、すべての収入を対象とするものであり、公的年金も対象とされます。
被扶養者となるには、保険者の認定を必要としますので、「被扶養者(異動)届」に被保険者証を添え、社会保険事務所に提出します。
【平成4年:事例研究より】