入社直後に病欠、被保険者証がなく自費治療したが支払った費用は還付されるか【平成4年:事例研究より】

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従業員Mは4月1日に入社したのですが、その直後にかぜを引き3日ほど休みました。

Mは当然健康保険に加入するわけですが、会社の担当者が加入手続きをとる前で被保険者証がなく、健康保険で治療することができませんでした。

治療費は自費で払ったということですが、このような場合、自費で支払った費用は健康保険から給付して貰えないのでしょうか。

【愛知・T社】

健康保険では、傷病の治療については保険で医療そのものを受ける現物給付を原則としています。

つまり、被保険者は保険医療機関に被保険者証を提出し、、現物給付として療養の給付を受けるわけです。

健康保険の被保険者の資格は適用事業所に使用されたことによって当然に取得しますが、保険者(社会保険事務所または健康保険組合)の確認を受けてはじめてその効力が生じます。

ですから、被保険者資格取得の手続きをする前で、まだ被保険者証の交付を受けていない場合には、現物給付としての療養の給付は受け’られないことになります。

このような場合、健康保険法第44条の2は、現物給付に代えて現金給付として療養費の支給を認めています。

療養費の支給は、1.保険者が療養の給付を行うことが困難であると認めたとき、2.被保険者が緊急その他やむを得ない事由により、保険医療機関以外の病院で診療を受けたときであって、しかも保険者がその必要ありと認めたときに行われます。

被保険者の資格を有する者が、事業主が被保険者資格取得届の提出を怠ったため被保険者証を有せず、療養の給付を受けることができなかった場合は、健康保険法第44条の2の「療養の給付を行うことが困難である場合」に該当します。

被保険者資格が確認されてから、療養費の支給が行われます。

また、事業主が資格取得届は提出したが保険者から被保険者証の交付があるまでの間に自費で診療を受けたときも、その診療に要した費用は療養費として支給されます。

ご質問の場合、療養費が支給されるケースに該当しますので、療養費支給申請書に医師の診療に要した費用の額の証拠書類を添付して社会保険事務所に提出します。

療養費として支給される額は、医療機関に支払った額全部の払い戻しを受けられるわけではありません。

健康保険でかかった場合を標準として、その額から一部負担金を控除した額が支払われます。

【平成4年:事例研究より】