近く65歳になる役員が関心を持つが、繰り下げは損か得か【平成15年:事例研究より】

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今年4月に65歳になる役員について、お尋ねします。

法改正で、厚生年金の繰り下げ受給は廃止されましたが、基礎年金は今でも繰り下げ可能と聞きます。

役員が希望した場合、基礎年金部分だけでも申請するメリットがあるでしょうか。

【富山 G社労士】

平成14年3月以前は、65歳に達すると、会社勤務を続けて高収入を受けていても、厚生年金保険の被保険者資格を喪失すると同時に、満額の老齡年金を受給できました。

しかし、役員等だと報酬が高額なため、上乗せで年金をもらっても税金が増えるばかりでそれほどメリットがありません。

一方で、年金の繰り下げを選択すると、繰り下げた期間に応じて1ヵ月あたりに受け取る年金額が増加します。

在職中は年金受給をストップすることで、退職してからゆっくり高額の年金を受け取れるのですから、この制度を利用する高齢役員等が多かったのもうなずけます。

しかし、平成14年度から、65歳以上70歳未満の期間は、会社勤務を続ける限り厚生年金の被保険者資格が存続する仕組みに改められました。

保険料を納める一方で、年金額も減額調整を受けるようになったのです(60歳代後半の在職老齢年金)。

合わせて、厚生年金の繰り下げ制度も廃止されました。

減額調整を受けるはずの人が年金の受け取りを先送りにするのを認めたのでは、せっかく設けた在職老齢のシステムが機能しないからです。

しかし、60歳代後半の在職老齢年金は調整の対象を厚生年金に限定しているので、いくら収入があっても基礎年金は満額が支給されます。

基礎年金に減額はないので、こちらの繰り下げ制度は存続することに決まりました。

繰り下げが効くのは基礎年金だけですから、以前に比べると、恩恵は小さくなりました。

しかし、退職後も長生きに自信があれば、制度を利用する価値は大いにあります。

繰り下げに伴う増額率は、平均年齢の伸びを考慮して、従来より大幅に切り下げられました。

ただし、改正後の数字が適用されるのは、昭和16年4月2日以降に生まれた人なので、今年65歳に達する人は対象外です。

古い数字、つまり有利な増額率が使用されるので、その意味でも繰り下げに対するインセンティブは高いといえます。

【平成15年:事例研究より】