失業給付を受給後に申請したいが、半年だけ繰り上げできるか【平成15年:事例研究より】

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私は、近く60歳定年を迎えますが、定年後、2年間だけは報酬比例の年金だけしかもらえない年代に属しています。

希望すれば、老齢基礎年金の一部繰り上げも可能なそうですが、減額率はどの程度になりますか。

仮に、約半年間、失業給付をもらって、その後、半年だけ繰り上げることも可能でしょうか。

【長野 I男】

老齢基礎年金の一部繰上げは、年金の支給開始年齢引き上げに合わせ、導入された制度で、月単位の申請も可能です。

昭和18年4月2日から昭和20年4月1日までの間に生まれた男性は、60歳から62歳になるまでの間、報酬比例の年金だけが支給されます。

定額部分が支払われるのは、62歳になってからですので、2年間、この定額部分の収入減をどう補うかという問題が生じます。

現実には、20年以上勤続して定年で辞めた人は、50日分の失業手当(基本手当)が出るので、収入減をカバーすべき期間は、約半年間になります。

足りない分を補うために、将来、受け取る給付を前倒ししてもらうわけですが、具体的には、2つの給付を原資とします。

まず第1は、62歳から65歳までもらえる定額部分。

大雑把にいうと、3年間にもらえる総額を、1年半前倒しし4年半にならして受け取る形にします。

金額は、当然少なくなりますが、その減額調整に使う率を繰上調整率といいます。

その計算式は、 繰上調整率=1一B/A B=繰上げ請求から年金が満額支給になるまでの月数 A=繰上げ請求から65歳になるまでの月数 お尋ねのケースでは、半年繰上げするのですから、 B=18ヵ月 A=54ヵ月 繰上調整率=1一18/54 = 66.67% つまり、60歳7ヵ月から65歳になるまで、定額部分相当は本来の満額支給額の66.67%となります。

差し引き、33.33%分だけ、受取額が少なくなるわけです。

そこで、この減額分を補うために、今度は、65歳からもらえる老齢基礎年金を一部前倒しにします。

ただし、老齢基礎年金の33.33%を丸々受け取ることはできません。

前倒しにすることで、やはり減額調整の対象となります。

減額調整率=1-0.5%×前倒し月数 お尋ねのケースでは、65歳支給の基礎年金を4年半前倒し(54ヵ月)するのですから、 減額調整率=1-0.5%×54ヵ月=73% 結局、老齢基礎年金を前倒ししてもらえる額は、33.33%×73% =24.33% 定額部分と老齢基礎年金の前倒し分を加算すると、 66.67%+24.33%=91% 1年半年金を前倒しにしても、年金が減るのは定額部分相当の9%に過ぎません。

そうすると、前倒しにした方が得だと感じるかもしれません。

しかし、この9%減は、65歳以降もずっと続きます。

人生80年時代といわれる現在、平均寿命まで生きるとすれば、61歳以降20年近く、9%減の状態が続くことになります。

健康に自信があれば、どちらが得か、難しいところです。

1年半は、退職金を取り崩すなどして、62歳から満額の年金をもらうのが賢明な選択なのかも知れません。

【平成15年:事例研究より】