4月から年休の最低付与日数が引上げになり後からの入社者が有利になることは法的に問題ないか【平成4年:事例研究より】

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当社は従業員100人未満の製造業です。

年次有給休暇の起算日を各人の入社日としています。

4月から最低付与日数を8日に引き上げなければならないということで、平成2年4月に入社した者に、4月に8日の年休を与えました。

それ以前の平成2年1月に入社した者に、1月に6日の年休を与えています。

あとから入社したにもかかわらず8日となり、年休日数が逆転していますが、法的に問題はないのでしょうか。

【東京T工業】

労基法第39条第1項は、「使用者は、1年間継続勤務し全労働日の8割以上出勤した労働者に対し、継続し、又は分割した10労働日の有給休暇を与えなければならない」と規定し、年次有給休暇(年休)の最低付与日数が10日に引き上げられています。

ただし、300人以下の事業場は猶予期間が設けられ、平成3年3月31日までは6日、平成3年4月1日から平成6年3月31日までは8日、平成6年4月1日からはどの規模も10日となります。

貴社も、年休の最低付与日数を平成3年4月1日から8日としなければなりません。

付与日数の引き上げは、単に最低付与日数だけに限られるものではなく、勤続2年以上の労働者についても必要な付与日数を増やさなければなりません。

具体的には、勤続2年の人には9日、3年の人には10日とそれぞれ2日ずつ増やすことになります。

最高付与日数が20日であることは変わりありません。

年休付与日数の引き上げは、平成3年4月以降の最初の基準日(起算日と同じ)から適用されます。

貴社は各人の入社日を基準日とされていますから、平成3年4月1日以降の最初の基準日に新しい日数で年休を付与します。

したがって、平成2年1月入社の者と4月入社の者がいたとすると、1月入社の者は平成3年1月に6日、4月入社の者は4月に8日の年休が付与されます。

4月入社の者はあとから入社したにもかかわらず8日となり、逆転するのではないかということですが、1月入社の者は来年1月に9日の年休が付与されますので、必ずしも逆転とはいえないと考えられます。

一時的にみれば逆転する(不公平)ように考えられますが、法的には、平成3年4月1日以降の最初の基準日に、新しく引き上げられた日数の年休を付与すればよいというのですから、法的にも問題はありません。

最低付与日数の引き上げに伴う過渡的な問題でやむを得ないものと考えられます。

【平成4年:事例研究より】