1年変形で始業・終業時刻の変更は可能か【平成16年:事例研究より】

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当社は1年単位の変形労働時間制を採用しています。

業務の都合上やむを得ない事情で所定労働時間を変更することなく、始業・終業の時刻を変更しなければならない場合があります。

1年単位の変形制でも、始業・終業の時刻を変更することはできるのでしょうか。

【神奈川・M社】

始業・終業の時刻は、労基法第89条の規定で就業規則の絶対的必要記載事項とされており、いかなる場合も必ず記載しなければなりません。

1年単位の変形労働時間制を採っている場合でも、各日の労働時間の長さだけでなく、各日の始業・終業の時刻を就業規則に定めることが必要です。

したがって、始業・終業の時刻は特定されることになります。

ご質問は始業・終業時刻の変更ですが、労基法第32条の4に規定する1年単位の変形労働時間制の場合の労働時間の変更について考えてみますと、この変形労働時間制の採用は、労使協定により、変形期間における労働日、労働日ごとの労働時間を具体的に定めることが要件とされており、「使用者が業務の都合によって任意に労働時間を変更するような制度は、これに該当しないものである」(平6・1・4基発第1号、平11・3・31基発第168号)とされています。

また、労使協定中に「労使双方が合意すれば、協定期間中であっても変形制の一部を変更することがある」旨明記されていたとしても、これに基づき「変形期間の途中で変更することはできない」(昭63・3・14基発第150号、平6・3・31基発第181号)とされています。

所定労働時間を変更するような始業・終業時刻の変更はできないといえます。

所定労働時間の長さを変えることなく始業・終業の時刻のみを変更する場合であっても、労働時間の位置の変更は、労働者の勤務態様、その生活に重大な影響があるものですから、労働契約上の根拠がなければなりません。

使用者が始業・終業時刻を勝手に変更しても、契約上の根拠がなければ、それに従う義務はありません。

労働契約上の根拠は、就業規則などに始業・終業時刻の変更に関する事由、条件(どのような場合にどういう方法で実施する)が定められていることです。

たとえば、就業規則において「次のような場合には前条の始業・終業時刻を繰上げまたは繰下げることができる」と定め、具体的な事由を定めている場合には、その事由が生じたときは、あらかじめ周知(少なくとも前日の勤務時間終了以前に)して実施することができます。

1年単位の変形制でも、契約上の根拠があれば実施可能と考えられます。

【平成16年:事例研究より】