遅刻、早退の賃金カットで、30分以上は切上げているが問題はあるか【平成16年:事例研究より】

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遅刻、早退、私用外出による1日の不就労時間を30分未満は賃金カットせず、30分以上は1時間に切り上げて賃金カットしています。

30分を境に四捨五入していますので、常に労働者に不利になるものではなく、この方法でよいと考えていますが、切上げに問題があるのでしょうか。

【香川・K社】

労働者が自己の都合で遅刻、早退、私用外出があった場合、労働の提供がなかった時間分の賃金を差し引くことはできます。

しかし、ご質問のように1日ごとに不就労時間分について30分を境に四捨五入をする方法ですと、30分未満の遅刻、早退などは切り捨てられ、賃金カットされませんので問題はないとしても、たとえば35分の遅刻をしますと1時間の遅刻として取り扱われ、実際に就労した25分の賃金もカットされることになります。

行政解釈は、遅刻、早退などの時間の端数処理について「5分の遅刻を30分の遅刻として賃金カットするような処理は、労働の提供のなかった限度を超えるカット(25分についてのカット)について、賃金の全額払いに反し、違法である。

なお、このような取り扱いを減給の制裁として、法第91条の制限内で行う場合には、全額払いの原則に反しないものである」(昭63・3・14基発第150号)としています。

賃金計算の簡便化が目的で、30分を境に四捨五入しており、常に労働者に不利になるものではなく、本来の意味での制裁としての減給でないように思われますが、遅刻、早退などにより実際に労働の提供がなかった時間を超えて賃金カットが行われる場合には、やはり労基法第91条の減給の制裁とみなければなりません。

この場合、就業規則中に制裁の章を設けて、その中に規定する等の方法によって制裁である旨 を明らかにする必要があります。

労基法第91条の減給の制裁の取扱いをしたくないということであれば、1日ごとではなく、その月の遅刻、早退、私用外出の不就労時間の合計につき、30分を境に四捨五入することが考えられます。

「1ヵ月における時間外労働、休日労働及び深夜業の各々の時間数の合計に1時間未満の端数がある場合に、30分未満の端数を切り捨て、それ以上を1時間に切り上げること」は、「常に労働者に不利になるものではなく、事務簡便を目的としたものであるから、法第24条及び第37条違反としては取り扱わない」(昭63・3・14基発第150号)とされています。

時間を端数処理することも、合理的な範囲であれば認められるのですから、月の不就労時間の合計につき行う場合は、残業時間の端数処理と同様、違法にならないと考えられます。

【平成16年:事例研究より】