転勤者に出張手当の意味で転勤手当を支給、割増の基礎に入れるべきか【平成4年:事例研究より】

トップ » 就業規則 » 就業規則の必要性と作り方(雛形)

当工場では、一部の者に転勤手当を支給しています。

この転勤手当は、工場が新設されたとき、本社工場から転勤してきた者に限り、出張手当の意味合いで支給されています。

前任者よりの申し送りにより、時間外労働の割増賃金の算定基礎に算入していませんが、通常の労働時間の賃金として割増賃金の基礎に入れないと違法となりませんか。

【群馬・K工業】

時間外・休日労働に対しては、通常の労働時間または労働日の賃金の計算額の2割5分以上の率で計算した割増賃金を支払わなければなりません(労基法第37条)。

割増賃金の基礎となる賃金は、「通常の労働時間または労働日の賃金」ですが、家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、臨時に支払われた賃金、1ヵ月を超える期間ごとに支払われる賃金は算入しなくてもよいこととされています(労基法第37条第2項、同施行規則第21条)。

これらの除外してよい6種類の賃金は制限的に列挙されているものですから、除外賃金に該当しない通常の労働時間または労働日の賃金はすべて割増賃金の基礎賃金に算入しなければなりません。

なお、これらの除外される手当は、「名称にかかわらず実質によって取り扱うこと」(昭22・ 9 ・13発基第17号)とされています。

ご質問では、転勤手当の支給条件の詳細は明らかでありませんが、本社工場からの転勤者に対して毎月一定額が支給されているものと思われます。

出張手当の意味合いで支給とのことですが、出張の際に、出張旅費規定などに基づいて支給される実質弁償的な日当と異なり、本社工場からの転勤者を優遇するために支給されているものと思われます。

転勤手当は、毎月一定額が支給されていれば、通常の労働時間に対して支払われる賃金ですし、除外してもよい手当のいずれにも該当しませんので、割増賃金の基礎に算入しなければなりません。

お説のとおり、転勤手当を算入しないと違法になります。

転勤手当が転勤により同一世帯の扶養家族と別居することを余儀なくされた者に支給されているものであるなら、別居手当に該当し、割増賃金の基礎から除外されます。

【平成4年:事例研究より】