産前休暇請求せずに有利な年休の取得は可能か【平成16年:事例研究より】

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産前6週間(産前休暇を請求せずに就労している場合)、産後6週間を経過した後(就労を請求し医師が認めた場合)は、年次有給休暇をとることができるのでしょうか。

通常、産前産後の休暇は無給の場合が多いので、年休日数が多いときは、健康保険の出産手当金(60%)より、年休の取得(100%)の方が有利と思われるのですが…。

【新潟・K社】

年次有給休暇は、賃金の減収を伴うことなく労働義務の免除を受けるものですから、休日その他労働義務の課せられていない日に年休をとる余地はありません。

年休が有効に成立するには、まずその日に労働義務があることが前提となります。

労基法第65条は、女性労働者の産前産後の休業期間を定め、1.産前6週間(多胎妊娠の場合は14週間)は本人の請求を条件とした就業禁止、2.産後8週間は本人の請求の有無を問うことなく就業禁止――としています。

産前6週間(多胎妊娠の場合は14週間)は、請求が条件となっており、請求がなければ就業禁止に該当しません。

産前休暇を請求しないで就労している場合には、年休を請求することにより免除を受ける労働義務が存在しますから、年休をとることができます。

産前休暇を請求することができる日(期間)について、その休暇と年休のいずれを選択するかは労働者の自由ということになります。

産前休暇を請求して休業している場合には、労働義務はありませんから年休をとることはできません。

産後8週間は就業させることが禁止されていますが、例外として産婦の健康状態から8週間を休業する必要のない場合や経済的事由から就労を希望する場合には、産後6週間を経過し、かつ、本人からの請求を条件として、その者について医師が支障がないと認めた業務に限って就労が認められています。

産後6週間を経過し、本人が請求し、医師が支障がないと認めた業務に就いた場合には、労働義務が発生することになります。

この場合は、年休を請求することにより免除を受ける労働義務が存在しますので、年休を請求することが可能となります。

健康保険では、出産の日以前42日から出産の日後56日以内において労務に就かなかった期間に、出産手当金として1日につき標準報酬日額の60%が支給されますが、就労を請求し年休をとった場合には支給されません。

出産手当金は、労基法の就業制限とは関係なく支給の適否が判断されるものですから、出産手当金の受給を強制し、就労に制約を加えるというものではありません。

【平成16年:事例研究より】