産休明けの女子係長に残業させたいが、本人の承諾があれば可能か【平成4年:事例研究より】

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出産休暇で休んでいた女子が、産休明けで出勤し始めました。

「しばらくは残業はできない」という申し出があったのですが、その女子は係長で、仕事が終わらないうちに抜けられるのは支障があります。

せめて1時間でも残業してくれると助かるのですが、係長であっても、残業を行わせることはできないのでしょうか。

もし、本人が承諾すればよいでしょうか。

【東京・S鉱業】

妊産婦の時間外労働、休日労働、深夜労働については、労基法第66条に「使用者は、妊産婦が請求した場合においては、第33条第1項及び第3項並びに第36条の規定にかかわらず、時間外労働をさせてはならず、又は休日に労働させてはならない」(同条第2項)、「使用者は、妊産婦が請求した場合においては、第64条の第1項ただし書の規定にかかわらず、深夜業させてはならない」(同条第3項)と規定されています。

妊産婦とは、妊娠中の女子および産後1年を経過しない女子をいいます。

したがって、妊産婦から請求されたときは使用者はその女子を時間外労働、休日労働、深夜労働に就けることはできません。

請求は、口頭による請求でも差し支えありません。

この規制を受けるのは、「請求」があった場合に限られますか・ら、本人から格別の請求もない場合には、時間外労働をさせても構いません。

ところで、満18歳以上の女子のうち、「労働者の職務の遂行を指揮命令する職務上の地位にある者」(指揮命令者)と「専門的な知識もしくは技術を必要とする業務に従事する者」(専門業務従事者)は、一般女子労働者の労働時間の規制がはずされ、男子と同等の扱いを受け、時間外労働、休日労働、深夜労働の制限は適用されません。

「指揮命令者」、「専門業務従事者」の範囲は、女子労働基準規則第3条で規定され、指揮命令者については「業務を遂行するための最小単位の組織の長であるもの又は職務上の地位がその者より上位にある者で、労働者の業務の遂行を指揮命令するもの」と定められています。

班長、係長などで部下がいる場合には、指揮命令者に含まれます。

ご質問の女子係長は、時間外労働、休日労働、深夜労働などについては男子と同等の扱いを受けるわけですが、妊産婦である場合には保護規定が優先し、請求がなされれば、時間外労働、深夜労働をさせることはできません。

産休明けの出社で、産後1年を経過していませんから、女子係長であっても請求があれば残業(時間外労働)をさせることはできません。

行政解釈は、「法第64条の2第4項に規定するいわゆる指揮命令者又は専門業務従事者である妊産婦が請求した場合にも、その範囲で時間外労働、休日労働又は深夜業が制限されるものであること(昭61・3・20基発第151号、婦発第69号)としています。

「しばらくは残業はできない」という申し出があったわけですから、たとえ1時間であっても残業させることはできません。

特に業務上の必要があって、その日だけ1時間の残業と本人の承諾があったような場合は、差し支えありません。

また、妊産婦の身体の状況の変化に伴い、請求内容の変更があった場合には、それに応じた取り扱いをしなければなりません。

なお、労基法第41条の管理監督者が妊産婦であった場合、時間外労働、休日労働の規制は受けませんが、請求した場合には深夜業をさせることはでき ません。

【平成4年:事例研究より】