産休明けの女子から育児時間の請求、いつ与えたらよいか。また往復時間はどうなるか【平成4年:事例研究より】

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出産休暇で休んでいた女子従業員が産休明けで出勤しはじめました。

その女子から育児時間が欲しいという申し出がありました。

育児時間の請求は、何分はじめてのことです。

労基法第67条によると、「1日2回各々少なくとも30分」を与えなければならないとなっていますが、育児時間はいつ与えればよいのでしょうか。

育児のため往復する時間はどうなのですか。

【北海道・M社】

労基法第67条は、育児時間について「生後満1年に達しない生児を育てる女子は、第34条の休憩時間のほか、1日2回少なくとも30分、その生児を育てるための時間を請求することができる。

使用者は、前項の育児時間中は、その女子を使用してはならない」と規定しています。

生後満1年未満の生児を育てる女子は、労基法第34条に定められている45分または1時間の休憩時間とは別に、1日2回各30分の育児時間を請求することができます。

育児時間は、請求によって与えられるものですから、請求しないときは与えなくても差し支えありませんが、生後1年未満の生児を育てる女子が請求したときは、必ず与えなければなりません。

いつ与えるかについては、労基法は規定していませんので、当事者間の自由にまかされています。

法文上は請求したときですから、女子が請求したその時間に与えることになります。

使用者としては、育児時間を請求された場合には、「使用してはならない」からです。

したがって、あらかじめ話し合って、一定の時間を定めておくべきでしょう。

育児時間は、休憩時間のように労働時間の途中に与える必要はありませんので、勤務時間の始めと終わりに各々30分ずつ与えることでも差し支えありません。

つまり、30分遅く出社し、30分早く退社する与え方でもよいわけです。

また、実質的な育児時間を確保するため、育児時間を一括して一度に請求できることとすることは、分割請求を認めず一律に1回とその請求し得る回数を制限するものではなく、一度にまとめての請求もできるということであれば、問題ないとされています。

勤務時間の始めまたは終わりの育児時間について、行政解釈は「生後1年に達しない生児を育てる女子労働者が、育児のための時間を請求した場合に、その請求に係る時間に、当該労働者を使用することは法第67条違反である」(昭・33・6・25基収第4317号)としています。

育児時間を1日2回、各々30分ではなく、1日1回1時間として請求された場合でも与えなければなりません。

育児時間は、最低30分ずつ2回(1日の労働時間が4時間以内であるような場合には1回)保障されていますが、この30分には往復時間も、含まれます。

作業場から生児のところまで往復するのに相当時間がかかる場合でも、往復時間を含めて30分か与えられていれば違法となりません。

しかし、このような場合には、往復時間を除いて育児時間が与えられることが望ましいことです。

行政解釈は、「往復時間を含めて30分の育児時間が与えられていれば違法ではないが、往復の所要時間を除き、実質的な育児時間が与えられることが望ましい」(昭25・7・22基収第2314号)としています。

なお、育児時間を有給とするか無給とするかは、当事者間の自由に委ねられています。

労働契約、就業規則、労働協約で定めるところによって、支給しても支給しなくても差し支えありません。

【平成4年:事例研究より】