残業時間が1日の所定時間を超えたら各人の自由で時間外を代休で相殺しているが法的に問題あるか【平成4年:事例研究より】

トップ » 就業規則 » 就業規則の必要性と作り方(雛形)

当社では、残業時間が1日の所定労働時間7時間30分を超えた場合、月1回に限って本人の希望で休める代休制度を認めています。

たとえば、その月の残業が20時間あって、代休をとった場合、20時間から7.5時間を差し引いた12.5時間に対し割増賃金を支払っています。

代休をとるかとらないかは各人の自由ということで、時間外を代休で相殺するような扱いをしているわけですが、法的に問題があるでしょうか。

【青森・S社】

「代休」とは、休日労働や長時間の時間外労働、深夜労働が行われた場合に、その代償措置として、以後の特定の労働日の労働義務を免除するものです。

時間外労働の時間が1日の所定労働時間に達したときに代休を与えても、現に行われた時間外労働が時間外労働でなくなるものでありません。

その月のすべての時間外労働(ご設例の場合は20時間)に対して割増賃金(125%以上)を支払わなければなりません。

一方、代休の日を有給とするか、無給とするかは当事者の定めるところによります。

代休の日が無給であれば、代休の日の賃金(7.5時間)を差し引くことができます。

したがって、無給であれば、時間外労働に対しては割増賃金を支払い、別途、代休の日の賃金を差し引くことになります。

20時間の時間外労働があって、代休をとった場合、20時間から代休の日の所定労働時間7.5時間を差し引き12.5時間にだけ割増賃金を支払うのは違法となります。

時間外労働20時間に対して割増賃金(125%)を支払い、通常の賃金から7.5時間分(100%)を差し引かなければなりません。

結果的には、時間外労働12.5時間に125%を支払い、代休の7.5時間には割増部分25%だけを支払うことになります。

代休をとるかとらないかは各人の自由とのことですから、代休をとらなかった場合には、所定の割増賃金が支払われ問題はありませんが、代休をとった場合には、所定の割増賃金が支払われなくなり違法となります。

代休をとった場合、たとえ労使合意でその時間分の割増賃金を支払わない申し合わせをしても、労基法第37条に抵触しますから無効であり、割増賃金を支払わない使用者は処罰されます。

またこの場合、裁判所は、労働者の請求により使用者に対し、未払いの割増賃金のほか、これと同額の付加金の支払いを命ずることができます(労基法第114条)。

【平成4年:事例研究より】