業務上でケガした後の3日間に年休与えても問題ないか【平成16年:事例研究より】

トップ » 就業規則 » 就業規則の必要性と作り方(雛形)

業務災害で休業する場合、労災保険の休業補償給付は休業の第4日目から支給され、休業最初の3日間は事業主が休業補償しなければなりませんが、未消化の年次有給休暇が多いなどの理由で、この3日間に年休を請求してきた場合、与えてもよいものでしょうか。

与えることができ、与えた場合、休業補償はどうなるのでしょうか。

【福岡・R社】

年次有給休暇は、賃金の減収を伴うことなくして、所定労働日に休養のために付与されるものですが、法律上はいかなる目的のために利用しようと関知せず、年休の利用目的が休養のためでないという理由で与えないことはできません。

業務災害による傷病の療養中の者が年休を請求してきた場合、現に就労しておらず、年休を行使することは年休の趣旨にいささか反するように思われます。

しかし、その日が労働日である限り免除するべき労働義務が存在しますので、これを拒否する根拠もありません。

労災休業期間中でも、年休権を行使することは可能ですし、病気欠勤に充用することも許されることから、年休の請求があった場合には与えなけ ればなりません。

行政解釈は「負傷又は疾病等により長期療養中の者が休養期間中年次有給休暇を請求したときは、年次有給休暇を労働者が病気欠勤等に充用することが許されることから、このような労働者に対して請求があれば与えなくてはならない」(昭24・12・28基発第1456号、昭31・2・13基収第489号)としています。

労災保険の休業補償給付が支給されない3日間の待期期間についても同様です。

年休の請求があれば与えなければなりません。

休業最初の3日間については、労基法第76条の規定により事業主が休業補償を行わなければなりませんが、業務上の傷病の療養のため労働することができないことと、賃金を受けないことが条件となっています。

この賃金を受けないとは、平均賃金の60%以上の賃金を受けないことをいいます。

待期期間に年休を請求し、年休をとりますと、年休の賃金として平均賃金、所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金、健康保険の標準報酬日額のいずれかが支払われます。

その額は平均賃金の60%以上です。

待期期間3日間について平均賃金の60%以上の賃金が支払われている場合、休業補償が行われたものとして取り扱われますので、重ねて休業補償する必要はありません。

ところで、待期期間3日間は、所定時間内に災害が発生した場合には、災害発生当日から起算されます。

災害発生当日は一部就労しており、その日に年休ということはありません。

3日間の年休とあり、翌日から3日間を年休処理しますと、休業補償給付は、休業の4日目から支給されるところ、第4日目は賃金が支払われているため、休業の第5日目からの支給となります。

翌日から2日間を年休処理すべきでしょう。

【平成16年:事例研究より】