本社と工場で労働時間が違う場合、出張者にはどの就業規則を適用するのか【平成16年:事例研究より】

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当社は、地方にいくつかの工場をもっており、就業規則はそれぞれ別個に定めています。

本社と工場では、労働時間(本社始業時刻午前9時、工場午前8時30分、終業時刻はどちらとも午後5時30分)、休日(本社は休日でも工場は出勤日)が違っている場合があります。

本社から出張させて、工場の業務に就かせた場合、どの就業規則を適用すべきでしょうか。

【大阪・O社】

ご質問の文面だけでは従業員派遣の具体的な内容は分かりませんが、「出張」だとすると、本社従業員が地方工場に出張を命じられ、そこで業務を行ったとしても、依然として本社の就業規則下にあります。

出張とは、ある事業に雇用される労働者が、その事業主の指揮命令を受けて比較的短時間、目的地に派遣され、業務を遂行するもので、身分関係、賃金の支払い関係は変わらないものです。

したがって、本社従業員が業務命令によって地方工場に赴き、その工場で仕事をしたとしても、本社の指揮命令によって労働し、ただその仕事をする場所が一時的に本社から工場に移ったにすぎませんから、このような出張の場合には、本社従業員として本社の従業規則の適用を受けます。

ですから、何日かの出張で、工場の就業時間に従って労働するような場合には、本社始業9時、工場始業8時30分というときは、その始業時刻の違いによる30分は早出として取り扱うべきでしょう。

「労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定し難いときは、所定労働時間労働したものとみなす」(労基法第38条の2)という規定があり、出張の場合は、労働時間の算定が困難でしょうから、このみなし労働時間制が適用されます。

しかし、出張に管理者が同行しているとか、出張先に管理者がいるときは、その人の具体的な指揮命令を受けますので、みなし労働時間制の適用は考えられません。

工場の就業時間に従って労働するような出張命令が出されている場合には、労働時間の算定が困難な場合には該当しませんので、所定労働時間労働したものとみなすことはできません。

工場の命令で時間外労働をすれば、時間外労働として算定しなければなりません。

また、本社の所定休日に、出張先の地方工場で労働した場合には、休日出勤扱いしなければなりません。

本社の所定休日に本社で出勤したと同様の扱いになります。

本社で休日出勤した場合、どのような休日出勤手当(割増賃金)が支払われるのか明らかでありませんが、たとえば、休日労働の割増率を法定休日(日曜日)35%増し、その他の休日25%増しとしている場合には、その定めによる割増賃金を実際に休日に労働した時間(地方工場は30分長い)に支払うことになります。

ただこの場合には、本社の就業規則に休日振替の規定があるでしょうから、事前に振替措置をとることが考えられます。

【平成16年:事例研究より】