就業規則で定年と退職日を明記しているか、法的解釈として事前予告か必要か【平成4年:事例研究より】

トップ » 就業規則 » 就業規則の必要性と作り方(雛形)

当社の定年制は満60歳で、就業規則に「従業員の定年は満60歳とし、定年に達した翌日(誕生日)をもって退職とする」旨定められています。

この3月に満60歳に達し、定年退職となる者がいますが、本人に対して事前に通知(少なくとも30日前に)すべきでしょうか。

法的な解釈として、定年退職に事前予告の義務があるのでしょうか。

【東京・R社】

定年制とは、通常、就業規則において一定の年齢、たとえば満60歳に達した日の翌日に退職することが定められているものであり、労働者が所定の年齡に達した場合は労働契約が自動的に終了すると解されています。

定年による労働契約の終了は解雇でありませんので、解雇に関する規定(労基法第19条、第20条)の適用を受けません。

定年制と解雇制限の関係について、「就業規則に定める定年制が労働者の定年に達した翌日をもってその雇用契約は自動的に終了する旨を定めたことが明らかであり、かつ従来この規定に基づいて定年に達した場合に当然雇用関係が消滅する慣行となっていて、それを従業員に徹底させる措置をとっている場合は、解雇の問題は生ぜず、したがって法第19条の問題も生じない」(昭26・8・9基収第3388号)。

1.就業規則上、所定の年齢に達した場合、労働契約が自動的に終了することが明らかであること、2.慣行としても、例外的な取り扱いはなく厳格に行われていること、3.このことが従業員にも徹底されていることーーの三つの要件を満たす場合には、労働者が定められた年齢に達したことにより、労使双方から何らの意思表示も要せずに、労働契約関係が自動的に消滅することになります。

ご質問の定年制が、定年年齢に到達したことにより労働契約が自動的に終了することが明らかであり、これに対する例外的な取り扱いが行われていない場合には、解雇ではありませんから解雇に関する規定(労基法第20条)の適用はありません。

したがって、解雇の予告の必要はありませんので、少なくとも30日前にその予告をする法的な義務はないといえます。

予告義務はないとしても、1ヵ月ほど前に定年退職となる旨本人に通知することは望ましいことです。

これに対して、原則として定年に達すれば退職することとされていても、会社の都合や本人の事情を考慮して定年に達した者を嘱託などで再雇用し、引き続き使用している場合には、定年に達したときに解雇することがあるという解雇権留保の制度にすぎないと解されます。

このような取り扱いの場合には、定年に達した後も労働者は引き続き雇用されることを期待することとなり、特に使用者から明示されるまでは定年後の身分が明らかにならないことにな。ります。

このような場合には、定年でやめてもらうのは解雇であり、労基法第20条に従って少なくとも30日前に解雇の予告(または解雇予告手当の支払い)か必要です。

また、少なくとも30日前に、「定年でやめてもらう」旨の事前予告が必要となります。

定年制なるものは、、個々の企業において定められるものですから、その規定の仕方や実際の運用面がまちまちですから、その定年制がいかなる意味をもつものか、つまり労働契約の自動的終了としての定年なのか、定年に達したことを解雇事由としているのかによって、事前予告の義務が異なってきます。

【平成4年:事例研究より】