定年退職者を再雇用しているが年休発生は新規扱いでよいか【平成4年:事例研究より】

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当社の定年は60歳ですが、再雇用制度があり、定年後1年の嘱託契約(最高3回まで)で再雇用しています。

退職時には退職金を支払い、身分は正社員(労組員)から嘱託(非組合員)に、賃金はダウン、勤務時間は従来どおりです。

この場合、いったん退職し、再雇用したわけですから、嘱託再雇用者の年次有給休暇を6日(4月からは8日)としています。

この嘱託者の年休も、1年ごとに1日ずつ増やさなければなりませんか。

【東京・T製作所】

労基法第39条第1項は、「使用者は、1年間継続勤務し全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した10労働日の有給休暇を与えなければならない」と規定しています。

同条第2項では、「使用者は、2年以上勤務した労働者に対しては、1年を超える継続勤務年数1年ごとに、前項の日数に1労働日を加算した有給休暇を与えなければならない」としており、2年以上継続勤務した者に対しては、勤務年数1年につき1日ずつ加算していかなければなりません。

最高付与日数は、20日を限度としていることは変わりありません。

年次有給休暇(年休)の最低付与日数は引き上げられていますが、300人以下の事業は猶予措置が設けられ、昭和63年4月1日から平成3年3月31日までの間は6日、平成3年4月1日から平成6年3月31日までの間は8日とし、平成6年4月1日から10日にすることとされています。

継続勤務年数に応じて年休日数を増加させなければなりませんが、この継続勤務とは,労働契約の存続期間つまり事業場における在籍期間を意味すると解されています。

定年退職者を嘱託として再雇用した場合、形式的には従前の労働契約とその後の労働契約は別個のものであっても、嘱託としての再雇用は、単なる企業内の身分の切り替えであって、実質的には労働関係が継続していると認められます。

したがって、定年退職者を引き続き嘱託として使用する場合には、勤務年数を通算しなければなりません。

行政解釈は,「定年退職による退職者を引き続き嘱託等として再雇用している場合(退職手当規程に基づき,所定の退職手当を支給した場合を含む)」は、実質的に労働関係が継続しているものと認められ、勤務年数を通算しなければならないとしています(昭63・3・14基発第150号)。

したがって、定年退職後、同一の事業において再雇用した場合でも、定年前と通算した勤務年数による年休を与えなければなりません。

勤務年数を通算せず、再雇用第1年度は8日(4月から)、第2年度9日、第3年度10日の年休しか与えないことは、法定の日数の年休が与えられておらず、違法となります。

なお、退職金が支払われたかどうかは、年休の継続勤務の判断に当たっては直接関係ありません。

【平成4年:事例研究より】