変更した後、労基署へ届けていない就業規則の効力はどうなる【平成16年:事例研究より】

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就業規則の作成・変更手続きについては、行政官庁に届け出なければならないとされていますが、就業規則を変更したにもかかわらず、所轄労基署への届出を怠り、届け出ていなかったという場合には、その変更した就業規則の効力はどうなるのでしょうか。

【神奈川・Y社】

作成・変更した就業規則は、その事業場に労働者の過半数で組織する労働組合がある場合にはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合には労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければなりません(労基法第90条第1項)。

意見聴取のなされた就業規則は、所轄労基署長に届け出なければなりません(第89条第1項)。

また、その際には、就業規則に関し聴取した労働組合等の意見を記載した書面を添付しなければなりません(第90条第2項)。

作成・変更した就業規則は、常時各作業場の見やすい場所へ掲示するか、または備え付けること、書面を交付することおよびその他命令で定める方法によって、労働者に周知させなければなりません(第106条第1項)。

作成・変更した就業規則を過半数労働組合(過半数代表者)に示して、その意見を求めることを要求されていますが、これは、就業規則が使用者の一方的な作成にゆだねられているところから、その作成・変更に労働者の団体意見を反映させる途を開いたもので、意見聴取の有無は就業規則自体の効力には関係がないと解されています。

就業規則の行政官庁への届出は、就業規則に対する行政的監督を目的とするもので、届出は効力要件ではないと解されています。

届出をしない場合には、労基法第89条違反となるものの就業規則としての効力は有することになります。

労基法第106条第1項の就業規則の労働者への周知手続きが就業規則の効力の発生要件か否かについては、学説、判例は分かれていますが、第106条第1項に規定する方法に限るかどうかは別として、何らかの方法による周知を効力要件と解しているものが多いといえます。

就業規則の法的性質について法規範説に立てば、就業規則を一般の法令と同様に労働者に周知されてはじめて効力が発生すると解するのが適当と思われます。

このように解すると、就業規則の効力発生要件としては、就業規則が何らかの方法によって労働者に周知された時期以後に(周知時期以後で具体的な施行日が定められている場合には、その日から)効力が発生することになります。

【平成16年:事例研究より】