医師が「早まりそう」と診断したが、産前休暇の起算日はいつになるか【平成16年:事例研究より】

トップ » 就業規則 » 就業規則の必要性と作り方(雛形)

産前休暇は、出産予定日の6週間(多胎妊娠の場合は14週間)前から当人の申請により発生しますが、出産予定日が早まった場合(医師により早産の可能性大と診断された場合)には、産前休暇の起算日は、当初の出産予定日を使用するのでしょうか。

それとも、早産しそうな日をあてるのが適当なのでしょうか。

【岐阜・T社】

労基法第65条は、1.6週間(多胎妊娠の場合にあっては、14週間)以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合においては、その者を就業させてはならない。

2.産後8週間を経過しない女性を就業させてはならない。

ただし、産後6週間を経過した女性が請求した場合において、その者について医師が支障がないと認めた業務に就かせることは差し支えない――としています。

産前6週間(14週間)の休業は、本人の請求を条件とする任意選択的な就業制限期間とし、産後6週間は請求の有無を問うことなく絶対的就業制限とし、その後の2週間は請求と医師の説明を条件とした選択的就業制限となっています。

産前産後の期間計算について行政解釈は「産前6週間の期間は自然の分娩予定日を基準として計算するものであり、産後8週間の期間は現実の出産日を基準として計算するものである」(昭26・4・2婦発第113号)としています。

産前6週間の期間計算は、自然の分娩予定日を基準として行うものですから、当初の出産予定日を起算日として行います。

なお、分娩予定日は産前6週間に含まれると解されています。

出産の範囲について、「出産は妊娠4ヵ月以上(1ヵ月は28日として計算する。

したがって、4ヵ月以上というのは、85日以上のことである)の分娩とし、生産のみならず死産をも含むものとする」(昭23・12・23基発第1885号)とされていますので、たとえば、妊娠中絶を妊娠4ヵ月以後に行った場合には、産後休暇は認めなければなりませんが、妊娠中絶(出産)まで休業した期間は、産前休暇となりません。

したがって、出産が早まるという場合でも、労基法上の出産休暇は当初の自然の分娩予定日を基準として計算し、6週間前から与えればよいはずです。

逆に、6週間以内に予定された分娩予定日より遅れて出産した場合には、予定日から出産当日までの期間は産前休暇として取り扱わなければなりません。

健康保険では、被保険者が出産したときは、出産の日以前42日(多胎妊娠の場合は98日)から出産の日以後56日までの間において労務に服さなかった期間、出産手当金という1日につき標準報酬日額の60%に相当する金額が支給されます。

実際問題として、早産の可能性大ということで、自然の分娩予定日の6週間前より早く休み、現実の出産を早まったという場合には、その早まった現実の出産日を基準として、それ以前42日の範囲内で出産手当金が支給されます。

【平成16年:事例研究より】