全社統一の就業規則を作成するが、事業場ごとに始業終業が異なるとき明記が必要か【平成4年:事例研究より】

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当社では事業場が分散しており、一部事業場の始業・終業の時刻が異なっていますが、就業規則中、始業・終業の時刻については、本社を基に明記してきました。

画一的管理を行うため、就業規則は本社一本で作成し、各事業場ごとに作成していません。

各事業場ごとの始業・終業の時刻を明記する必要がありますか。

本社時刻の明記では問題があるとしたら、本社時刻の明記のほか、「他の事業場は異なる」と1項目を追加すればよいでしょうか。

【愛知・N社】

就業規則の適用単位は、労基法の適用単位の各事業場ごとです。

労基法第8条は、適用事業を定めており、適用は各事業場単位となっています。

行政解釈は、「事業とは、工場、鉱山、事務所、店舗等の如く一定の場所において、相関連する組織のもとに業として継続的に行われる作業の一体をいうのであって、必ずしもいわゆる経営上一体をなす支店、工場等を総合した全事業を指称するものではないこと」、一の事業であるか否かは主として場所的観念によって決定するべきもので、同一場所にあるものは原則として分割することなく1個の事業とし、場所的に分散しているものは原則として別個の事業とすること」(昭22・9・13発基第17号)としています。

ですから、本社、支社、支店などを総合したいわゆる企業単位ではなく、本社、支社などがそれぞれ一つの独立した事業とされるわけです。

したがって、二就業規則は各事業場ごとに作成し、行政官庁への届出は、それぞれの事業場を管轄する労基署にしなければなりません。

ご質問のように数事業場を有する会社で全社統一された就業規則の場合も、届出は各事業場ごとにする必要があります。

本社、各事業場とも、始業・終業時刻が同じなら、本社を基に作成した統一的な就業規則を各事業場の就業規則とし、それぞれの事業場で届け出ればよいのですが、各事業場の始業・終業の時刻が異なる場合には、各事業場ごとの就業規則に、その始業・終業の時刻を明記して届け出なければなりません。

また、就業規則作成(変更)の手続きとしての団体意思の聴取も、事業場単位で、各事業場ごとに行わなければなりません。

全社的に統一した就業規則を各事業場に適用し、その始業・終業の時刻が、各事業場の始業・終業の時刻と異なりますと、労基法第93条により「就業規則に定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とする。

この場合において無効となった部分は、就業規則で進める基準による」ことになり、統一的就業規則の始業・終業の時刻が優先的に適用されることになり問題があります。

「他の事業場は異なる」と一項目を追加すればよい問題でありません。

【平成4年:事例研究より】