入社前研修を3日間実施するが、賃金は初任給から割り出せばよいか【平成4年:事例研究より】

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新規学卒者の入社日は4月1日ですが、入社前研修を行うことになり、3月25日から3日間実施します。

研修内容は、社員としての心構え、各部門の説明、諸規定などの説明です。

研修時間は午前10時から午後4時までで、昼1時間の休憩時間です。

この研修に対して賃金を支払わなければなりませんか。

支払うとしたら、入社後に支払われる初任給をもとに計算した額を支払うべきでしょうか。

【東京・H社】

一般的にいって、従業員の教育、研修などを行う場合、その研修への参加が従業員の義務とされ、参加が強制されている場合には、その参加時間は労働時間となり、賃金を支払わなければなりません。

労働時間であるか否かは、就業規則上の制裁などの不利益な取り扱いの有無や、教育、研修の内容と業務との関連性が強く、それに参加しないことにより本人の業務に支障が生ずるか否かなどの観点から、実質的に出席の強制があるか否かにより判断しなければなりません。

ご質問の場合、入社前の研修ですが、その研修内容、参加目的などからみて、会社業務を行うに必要な研修と考えられ、その研修に参加する時間は労働時間であり、賃金を支払わなければなりません。

この場合の賃金は、就業規則などに研修期間の賃金が定められている場合には、その定められた賃金を支払う必要があります。

別段の定めのない場合には、その従業員に対して定められている賃金、つまり入社後に支払われることになっている賃金(初任給)をもとに計算した額を支払うのが妥当だといえますが、必ずしも初任給を支払う義務が当然あるとはいえません。

入社前研修は、労働の内容が入社後の労働と質、量とも異なるものですから、使用者が任意に定める額を支払えば違法にならないと考えられます。

必ずしも、各人に定められている初任給を支払う必要はなく、全員について一定金額を定めて支給することで差し支えありません。

しかし、この場合でも最低賃金法の適用がありますので、これを上回る賃金を支払う必要があります。

一定金額を支払うにしても、最低賃金を上回る額としなければなりません。

【平成4年:事例研究より】