パートが労災で休業した場合、期間満了で契約解除できるか【平成16年:事例研究より】

トップ » 就業規則 » 就業規則の必要性と作り方(雛形)

当社では、社員以外に有期契約のパートタイマーを多数雇用しています。

このパートタイマーが労災にあって休業するに至った場合、その休業期間中に「契約期間の満了」を理由に契約解除することができるでしょうか。

つまり解雇制限に接触しないでしょうか。

もし可能である場合、契約解除後の労災保険の休業補償給付はどうなるのでしょうか。

【兵庫・M社】

労基法第19条は「使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後30日間は、解雇してはならない」と規定しています。

同条が禁止している解雇とは、労働契約を将来に向かって解約する使用者の一方的な意思表示のことです。

したがって、労働者側からするいわゆる任意退職、労働契約に期間の定めがある場合の期間満了にする労働契約の終了などは解雇ではありませんから、解雇制限期間中であっても、労働関係を終了させることは差し支えありません。

行政解釈は「一定の期間又は一定の事業の完了に必要な期間までを契約期間とする労働契約を締結していた労働者の労働契約は、他に契約期間満了後引続き雇用関係が更新されたと認められる事実がない限りその期間満了とともに終了する。

したがって、業務上負傷し又は疾病にかかり療養のため休業する期間中の者の労働契約もその期間満了とともに労働契約は終了するものであって、法第19条第1項の適用はない」(昭23・1・16基発第56号、昭24・12・6基收第3908号、昭63・3・14基発第150号)としています。

パートタイマーを有期契約で雇用し、その期間満了できちんとやめさせるのは契約期間の満了に伴う労働契約の終了ですから、解雇の問題は生じません。

しかし、有期契約であってもその契約を反復更新し相当長期間にわたって労働関係が継続している場合には、たまたまある契約期間の満了によって労働契約を終了させる場合であっても、解雇であると考えられます。

有期契約を反覆更新してきた場合には、労基法第19条の問題が残ります。

初めての有期期間であったか、反覆更新した有期契約であったかによって異なるわけです。

被災パートタイマーが契約解除され労働関係が消滅した場合でも、労災保険給付を受ける権利は変更されません。

このことは、労災保険法第12条の5に「保険給付を受ける権利は、労働者の退職によって変更されることはない」と規定されています。

したがって、契約解除後も、療養を必要とする場合には療養補償給付が行われますし、療養のため労働することができないという休業補償給付の支給事由が存する限り、休業補償給付が支給されます。

【平成16年:事例研究より】