業務前日に出発せよといわれたが、手当の支払いなければ命令に従わなくてよいか【平成16年:事例研究より】

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月曜日の朝から出張先で業務を行うため前日の休日(日曜日)に出発するような出張を命じられることがあります。

休日に旅行するだけでは、その旅行時間は労働時間でないということで休日出勤手当は支払われません。

休日の旅行時間が労働時間でないとすると、休日に出発する出張命令に従う義務はないことになりませんか。

【東京・H男】

月曜日の朝から出張先で業務を行うため前日の休日(日曜日)に出張することを命じても、単に列車などに乗車しているにすぎない場合は、休日労働として割増賃金を支払う必要はありません。

行政解釈は「出張中の休日はその日に旅行する等の場合であっても、旅行中における物品の監視等別段の指示がある場合の外は休日労働として取扱わなくても差し支えない」(昭23・3・17基発第461号、昭33・2・1基発第90号)としています。

休日に労働すれば休日労働ですが、単なる旅行時間は、車中で業務を行うわけではなく、自由に過ごしているものですから、労基法の規制を受ける労働時間とみることに無理があります。

ただ、休日の旅行も、使用者の出張命令によって出張先に向かっている時間ですから、使用者の拘束下にある時間であり、広い意味の"労働"であると考えられます。

行政解釈も「差し支えない」という表現で、これを否定するものでありませんが、その労働の特殊性にかんがみ、労基法上の休日労働として取り扱わなくてよいとしているものと考えられます。

休日の単なる旅行時間は休日労働として取り扱わなくてよいとしても、それは休日労働の割増賃金を支払う必要がないという意味であって、その出張命令に服すべき義務まで免除するものではないと考えられます。

ご質問の場合も、休日に出発することを命じているのですから、出張命令が出されていることは明らかです。

この出張命令は、労働者を拘束する点では、一般の出張命令となんら異なるものでありません。

出張命令を受けた労働者がこれを一方的に拒否すれば業務命令違反として処分の対象となることも考えられます。

したがって、旅行時間は労働時間でないとしても、出張命令に従う義務がないということにはなりません。

休日労働として取り扱う必要がない旅行時間であっても、使用者の拘束下にある時間ですから、何らかの対価が支払われるべきでしょう。

休日の旅行時間の賃金は必ずこうしなければならないという法律上の要求があるわけではなく、賃金規則なり、旅費規定なりの定めによります。

旅行時間(拘束下にある時間)にどのような賃金を支払うか、あらかじめ明確にしておくべきでしょう。

日当を加味した賃金として出張手当を支払っている場合、休日についてもその金額を支払うべきでしょう。

通常、休日についても旅費、宿泊費のほか、出張手当(出張の日当)が支払われています。

【平成16年:事例研究より】