時間外手当の端数を1年まとめて清算したいが、毎月必ず払わなければならないか【平成16年:事例研究より】

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当社の賃金計算期間は、前月21日から当月20日までで賃金支払日は毎月28日です。

時間外労働を行った場合の時間外割増賃金も、28日に支払っていますが、その月中に時間外割増賃金を支払わなければなりませんか。

時間外を時差として累積しておき、年1回年度末に、その累積時差数に応じて時間外割増賃金を支払うということはできないのでしょうか。

【青森・K社】

労基法第24条第2項では「賃金は、毎月1回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない」と規定しています。

この毎月とは、暦月によるものですから、毎月1日から月末までの間に少なくとも1回、その期日が特定され、周期的に到来するものでなければなりません。

賃金締切期間および支払期限については明文の定めは設けていませんから、賃金締切期間は必ずしも月の初日から起算し末日に締切る必要はなく、貴社のように前月21日から当月の20日までを1期間とすることは差し支えありません。

支払期限は、必ずしもある月の労働に対する賃金をその月中に支払うことを要せず、不当に長い期間でない限り(賃金計算の事務処理に要する範囲内で)、締切り後ある程度の期間を経てから支払う定めでも差し支えありません。

また、毎月1回以上、一定期日払いは、賃金を全額1度に支払うということではありませんから、基本給などは28日に支払い、時間外分は計算の都合上、後から(たとえば翌月1日)支払う定めでも、労基法違反となりません。

したがって、就業規則の定めで時間外割増賃金を翌月に支払うことであっても差し支えありませんが、時間外割増賃金であっても、賃金であることに変わりなく、毎月1回以上、一定期日払いが適用されます。

ですから、毎月1回以上、一定期日払いという枠のなかで、時間外割増賃金を毎月1日から月末までの間に支払わなければなりません。

ご質問の「時間外を時差として累積しておき」という意味が明らかでありませんが、1ヵ月の時間外の合計時間数に1時間未満の端数がある場合、その端数を1年間累積しておき、1年1回清算しようというものと考えられます。

もしそうであるならば、時間外割増賃金も賃金であり、毎月1回以上払いの適用がありますので、労基法第24条の全額払いの違反となります。

また、法が要求する時間外労働の割増賃金が支払われないことになりますので、労基法第37条違反となります。

時間外労働の端数時間を累積しておき、1年に1回支払うことは許されません。

なお、「1ヵ月における時間外労働の時間数の合計に1時間未満の端数がある場合に、30分未満の端数を切り捨て、それ以上を1時間に切り上げること」は、「常に労働者の不利になるものではなく、事務簡便化を目的としたものと認められるから、法第24条及び第37条の違反としては取り扱わない」(昭63・3・14基発第150号)とされています。

【平成16年:事例研究より】