扶養数に関係なく家族手当を一律に定額支給。割増基礎に算入すべきか【平成4年:事例研究より】

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当社では、4月の賃金改定を機に、諸手当の統合、廃止を検討しています。

このうち家族手当ですが、扶養する配偶者を有する者に5,000円、子1人1,000円ずつを支給してきたものを、配偶者5,000円、子1人2,000円にし、第2子以下は不支給に改めたい考えです。

子に対する家族手当は、子1人で打ち切りという方式ですが、扶養家族数に関係なく一律に支払われるということで、割増賃金の計算基礎に含めなければなりませんか。

含めなければならないという意見が出て困惑しています。

【宮城・Y機工】

割増賃金の基礎となる賃金は、労基法第37条第1項に規定されているとおり、「通常の労働時間または労働日の賃金」です。

しかし、同条第2項によって、家族手当、通勤手当その他命令で定める賃金は算入しないでよいことになっています。

命令で定める賃金として、労基法施行規則第21条は、別居手当、子女教育手当、臨時に支払われた賃金、1ヵ月を超える期間ごとに支払われる賃金を掲げています。

これらの手当は、制限的に列挙されているものですから、これらの手当に該当しない「通常の労働時間または労働日の賃金」は、すべて割増賃金の基礎となる賃金に算入しなければなりません。

算入する必要のない家族手当とは、「扶養家族数またはこれを基礎とする家族手当額を基準として算出した手当」をいい、家族手当と称していても、「扶養家族数に関係なく一律に支給されている手当は家族手当とはみなさない。

したがって、かかる手当は割増賃金の基礎に入れるべきである」(昭22 ・11 ・ 5 基発第231号)とされています。

「家族数に関係なく一律」というのは、扶養家族があれば、それが何人であるかに関係なく、扶養家族のある者全員に一定額を支給する場合をいうものです。

家族手当を設ける場合、支給対象となる扶養家族の範囲をどのようにするか、配偶者、子の別によって額に差を設けるかなどは労使が自由に定めることができるもので、打ち切り制度も当然あり得るわけです。

打ち切り制度を設けたからといって(第2子以下打ち切りでも、第4子以下打ち切りでも)、労基法第37条にいう家族手当には該当しないとはいえないと思われます。

もっとも、扶養家族1人目いくら、2人目以下打ち切りという家族手当は、結果的に家族数に関係なく一律に支給される手当と全く同じですから、労基法第37条の家族手当には該当しなくなります。

配偶者5,000円、第1子2,000円と一応家族数に応じて支給するが、第2子以下は打ち切りという場合にも、やはり家族数に関係して支給されるものであり、労基法第37条の家族手当と考えられます。

したがって、第2子以下は打ち切りでも、割増賃金の基礎となる賃金に算入する必要はないと考えられます。

【平成4年:事例研究より】