年俸制なら一般社員でも割増賃金は不要か【平成16年:事例研究より】

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当社では、管理監督者でない一部の一般社員にも、年俸制の適用を検討しています。

年俸制は年間の金額をあらかじめ確定しておくものですから、時間外労働などの割増賃金を含むものとして年俸額を決定すれば、割増賃金の支払いは不要となるのでしょうか。

【東京・N社】

年俸制適用労働者であっても、時間外・休日労働、深夜労働の割増賃金を支払わなければなりません。

年俸制といっても、割増賃金相当分があらかじめ含まれているという考え方はできません。

しかし、割増賃金相当分を含めて年俸額を決定することができないわけではありません。

行政解釈は「年俸に時間外労働等の割増賃金が含まれていることが労働契約の内容であることが明らかであって、割増賃金相当部分と通常の労働時間に対応する賃金部分とに区別することができ、かつ、割増賃金相当部分が法定の割増賃金額以上支払われている場合は労働基準法第37条に違反しないと解される」(平12・3・8基収第78号)としています。

割増賃金相当額を含めて年俸額を決めるには、労働契約上、年俸に割増賃金が含まれていることが明らかにされ、年俸のうちいくらが割増賃金相当額になるかが明確にされていなければなりません。

年俸に割増賃金が含まれていることが就業規則や賃金規定で明記されていても、割増賃金相当額が不明の場合には、年俸に割増賃金が含まれているとは認められません。

別途、割増賃金を支払う必要があります。

年俸に割増賃金が含まれている旨が定められ、年間の割増賃金相当額を各月均等に支払うこととしている場合、各月ごとに支払われる割増賃金相当額が、各月の時間外労働の時間数に基づいて計算した割増賃金を上回っている限り違法となりません。

時間外労働の多い月、少ない月があって、年間でみれば実際の割増賃金を上回っていたとしても、ある月の時間外労働の割増賃金が割増賃金相当額より多くなった場合には、その月には不足分の割増賃金を支払わなければなりません。

年俸額のうち、割増賃金相当額が明確になっていない場合には、年俸に割増賃金を含めているといっても、根拠がありませんので、年俸とは別に時間外労働などの割増賃金を支払わなければなりません。

行政解釈は「年俸に割増賃金を含むとしていても、割増賃金相当額がどれほどになるかが不明であるような場合及び労使双方の認識が一致しているとは言い難い場合については、法第37条違反として取り扱うこととする」(平12・3・8基収第78号)としています。

【平成16年:事例研究より】