営業時間に合わせ法内残業させるが、手当で払って問題ないか【平成16年:事例研究より】

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当社の勤務時間は、午前9時から午後5時30分(休憩1時間)となっていますが、営業関係は午後6時頃になります。

そこで、営業関係の女性事務員を2人ずつ交替で午後6時まで勤務させたいと考えています。

実働7時間30分ですから、この30分は労基法でいう時間外でありませんので、一定額の手当を支給することでよいでしょうか。

【東京・M社】

時間外労働として割増賃金を支払う必要があるのは、1日8時間、1週40時間の法定労働時間を超えた場合です。

行政解釈は「労働時間が通算して1日8時間又は週の法定労働時間以内の場合には割増賃金の支給を要しない」(昭22・12・26基発第573号、昭33・2・13基発第90号)としています。

ご質問の場合、勤務時間は午前9時から午後5時30分(休憩1時間)で実労働時間は7時間30分ですから、午後5時30分から6時まで勤務させても法定の8時間を超えませんので、労基法上は割増賃金を支払う必要はありません。

しかし、賃金は午前9時から午後5時30分までの労働に対して支払われているものですから、午後5時30分を超える30分には、原則として通常の労働時間の賃金を支払わなければなりません。

所定労働時間が7時間で8時間まで労働させた場合の1時間について、「法定労働時間内である限り所定労働時間外の1時間については、別段の定めのない場合には原則として通常の労働時間の賃金を支払わなければならない。

ただし、労働協約、就業規則等によって、その1時間に対して別に定められた賃金額がある場合にはその別に定められた賃金額で差し替えない」(昭23・11・4基発第1592号)としています。

法定労働時間を超えない午後5時から6時までの30分の勤務(法内残業)については、少なくとも通常の賃金を支払えばよいわけですが、就業規則などに所定労働時間を超える労働に対して割増賃金を支払う旨の定めがあれば、割増賃金の支払いが必要です。

法内残業にも割増賃金を支払っている場合が多くありますので、できれば所定終業時刻を超える30分に支払うことが望ましいといえます。

ご質問では、割増賃金ではなく一定額の手当を支給したいとのことですが、「別に定められた賃金額がある場合には、その別に定められた賃金額で差し支えない」とされていますので、一定額の手当でもよいと考えられます。

一定額をいくらにするかは、当事者の自由ですが、通常の賃金か、それを上回る金額とすべきでしょう。

「所定労働時間が7時間の事業場において、所定労働時間を超え、法定労働時間に至るまでの賃金として、本給の外に一定月額の手当を定め個々の労働者が所定時間外労働をすると否とにかかわらずこれを支給することはその手当の金額が不当に低額でない限り差し支えない」(昭29・7・8基収第3264号、昭63・3・14基発第150号)とした行政解釈があります。

【平成16年:事例研究より】