冬季だけ支給している雨天手当は、割増から除外できるか【平成16年:事例研究より】

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当社では、屋外作業従事者に対して、冬期間に限り降雨(雪)の日に雨天手当を支給しています。

これは、1日単位で支給するものです。

雨天手当を時間外の割増賃金の基礎賃金に算入するとした場合、割増賃金の時間当たり賃金が異なり、賃金計算が煩雑となりますが、割増基礎から除外することはできないのでしょうか。

【青森・W社】

割増賃金の基礎となる賃金は、「通常の労働時間の賃金」ですが、「家族手当、通勤手当その他厚生労働省令で定める賃金」は算入しないでよいと定められています(労基法第37条)。

この厚生労働省令で定める賃金とは、労基法施行規則第21条で、別居手当、子女教育手当、住宅手当、臨時に支払われた賃金、1ヵ月を超える期間ごとに支払われる賃金の5種類を定めています。

この7種類の除外賃金は、例示ではなく制限的に列挙されているものですから、これらに該当しない「通常の労働時間または労働日の賃金」はすべて割増賃金の基礎に算入しなければなりません。

ご質問の雨天手当は、冬季間の降雨(雪)の日の屋外作業に対して1日単位で支払われていますので、明らかに通常の労働時間または労働日の賃金ですし、除外賃金のいずれにも該当しません。

危険作業に従事する場合、その日に特に危険作業手当が支給されることになっているとき、行政解釈は「危険作業が時間外労働に及ぶ場合には、危険作業手当を法第37条の割増賃金の基礎となる賃金に算入して計算した割増賃金を支払わなければならない」(昭23・11・22基発第1681号)としています。

したがって、割増賃金の支払い方法としては、雨天手当が支払われる日の作業が時間外に及び、時間外割増賃金が支払われる場合にのみ、雨天手当を割増賃金の基礎に算入した割増賃金を支払えばよいことになります。

つまり、雨天手当は、当然「通常の労働時間または労働日の賃金」に含まれ、割増賃金の基礎となる賃金ですが、雨天手当が支払われない日の作業が時間外に及んでも、雨天手当を割増賃金の基礎に含める必要はないわけです。

ご質問では、賃金計算が煩雑とのことですが、雨天手当は1日単位で支給されていますので、日によって定められた賃金です。

日によって定められた賃金については、その金額を1日の所定労働時間数(日によって所定労働時間数が異なる場合には、1週間における1日平均所定労働時間数)で除した金額が割増賃金の計算基礎となる1時間当たり金額です(労基法施行規則第19条)。

月によって定められた賃金と日によって定められた賃金がある場合には、それぞれ1時間当たり金額を算出し、その合計した金額が割増賃金の計算基礎となる1時間当たり単価となります。

この合計額に1.25を乗じた金額が、降雨(雪)日の時間外1時間の割増賃金となります。

【平成16年:事例研究より】