住宅手当を扶養家族に応じ支給しているが、割増基礎から除外してよいか【平成16年:事例研究より】

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当社では、扶養家族のある者に対して2万円、扶養家族のない単身者に対して1万円の住宅手当を支給しています。

この家族手当は、割増賃金の計算に含め時間単価を出していますが、「住宅手当は、割増賃金の基礎から除外できる」と聞きました。

当社の住宅手当は、割増賃金の基礎から除外できるのでしょうか。

【大阪・K社】

労基法第37条第4項で「第1項及び前項の割増賃金の基礎となる賃金には、家族手当、通勤手当その他厚生労働省令で定める賃金は算入しない」と規定され、同法施行規則第21条で別居手当、子女教育手当、住宅手当、臨時に支払われた賃金、1ヵ月を超える期間ごとに支払われる賃金を除外賃金項目として定めています。

しかし、住宅手当については、「住宅手当」という名称の手当であれば、すべて除外できるわけではありません。

割増賃金の基礎から除外される住宅手当の具体的範囲が通達(平11・3・31基発第170号)で示されていますが、それによると、除外できる住宅手当とは、住宅に要する費用に応じて算定される手当をいうものであり、手当の名称の如何を問わず実質によって取り扱うこととされています。

「住宅に用する費用」とは、賃貸住宅については、住宅(付随設備等を含む)の賃貸のために必要な費用、持家については、住居に必要な住宅の購入、管理等のために必要な費用とされています。

「費用に応じた算定」とは、費用に定率を乗じた額とすることや、費用を段階的に区分し費用が増えるにしたがって額を多くすることをいうものであるとされています。

住宅に要する費用以外の費用に応じて算定される手当や、住宅に要する費用に関わらず一律に定額で支給される手当は、除外される住宅手当には当たりません。

たとえば、1.賃貸住宅居住者には家賃の一定割合、持家居住者にはローン月額の一定割合を支給する場合、2.住宅に要する費用を段階的に区分し、家賃月額5万円未満の者には1万円、家賃月額5〜10万円の者には2万円、家賃月額10万円を超える者には3万円を支給する場合などは、除外される住宅手当に該当します。

一方、1.住宅の形態ごとに、賃貸住宅居住者には2万円、持家住居者には1万円を支給する場合、2.家賃や月々の住宅ローンと関係なく、扶養家族のある者には2万円、扶養家族がない者には1万円を支給する場合、3.全員に一律に定額を支給する場合などは、除外される住宅手当に該当しません。

ご質問の住宅手当は、住宅に要する費用に関係なく、扶養家族のある者には2万円、単身者には1万円を支給するものですから、除外できる住宅手当に該当せず、割増賃金の基礎となる賃金から除外することはできません。

したがって、割増賃金の時間単価の計算に当たっては、住宅手当を割増賃金の基礎となる賃金に含めなければなりません。

【平成16年:事例研究より】