安衛法上の「元方、注文者」と徴収法上の「元請負人」の違いは【平成15年:事例研究より】

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労働安全衛生法の第15条には「特定元方事業者」についての規定があり、同じく31条には「注文者」についての規定があります。

また、労働保険の保険料の徴収等に関する法律の第8条には「元請負人」についての規定があります。

これらの三者は実際的には同一の事業主となるのでしょうか。

互いの責任関係が複雑でよくわかりませんので、整理して説明してください。

【鳥取 I社】

特定元方事業者という制度は、労働災害一般の防止をすることが目的でなく、請負関係の下において複数の事業者の使用する労働者の作業が「同一の場所において行われることによって生ずる労働災害を防止するため」に設けられた制度です。

ですから、労働安全衛生規則第63 5条以下に詳細に規定されているように、協議組織の設置であるとか、作業間の連絡調整であるとか、合図や標識の統一であるとかということが大事なことになります。

では、同一の場所において行われることによって生ずる労働災害を防止するための活動の中心となる特定元方事業者は、労働保険の保険料の徴収等に関する法律(以下「徴収法」と略称します)第8条の「元請負人」と一致するでしょうか。

労働安全衛生法第15条1項をみますと、ここで対象にしている事業者は「一の場所において行う事業の仕事の一部を請負人に請け負わせているもの」ですから、必ずしもいわゆる「元請」だけではないことがわかります。

ですから特定「元請」事業者といわず特定「元方」事業者というのでしょう。

適用対象が建設業だけでなく造船業も含んでいるので(労働安全衛生法施行令第7条)、当然のことといえます。

したがって、特定元方事業者は、建設業の元請負人だけを対象としている徴収法第8条に規定する「元請負人」よりも範囲が広いといえましょう。

注文者:労働安全衛生法第31条に規定する注文者に関する制度は、特定元方事業者制度のように、事業者を異にする労働者の作業が同一の場所において行われることによって生ずる労働災害の防止と違って、注文者が「建設物、設備又は原材料を請負人の労働者に使用させるとき」に発生する労働災害の防止を目的とする制度です。

具体的な範囲については、労働安全衛生規則第644条以下に詳細に規定されています。

そこで、第31条の注文者ですが、これは仕事を発注する者ですから、必ずしも元請負人とも限りません。

また、最先次の請負契約の注文者が該当する特定元方事業者だけとも限りません。

例えば、二次下請業者が三次下請業者の労働者に自己の足場を使用させるときは、その二次下請業者は、その限りにおいては第31条の注文者として規制を受けることになります(安衛則第655条)。

しかし、この二次下請業者が、特定元方事業者や元請負人に該当しないことは明らかで、三者が重なる場合はあっても完全に一致はしないということです。

なお、三次下請業者は注文者とは別に、自分の使用する労働者に対しては本来の足場に対する安全責任(安衛則第562条)があることは当然で、所有権の有無には関係ありません(最高裁第三小法廷昭47・6・6判決)。

したがって、注文者まかせの安全対策はいけないということです。

元請負人:徴収法第8条1項には、厚生労働省令で定める事業が数次の請負によって行われる場合には、元請負人のみを事業主とすると規定されています。

そして、徴収法施行規則第7条には、厚生労働省令で定める事業は「建設業」とすると規定されています。

そこで、例外はありますが(徴収法第8条2項)、原則的には建設業においては元請負人について労災保険関係が成立するということです。

これは労働基準法第87条に規定されている元請負人の災害補償義務と同様で、戦前から引き継がれてきた考え方です。

しかし労災の補償と違い、労災の防止となると不十分な面があったので特定元方事業者制度であるとか、注文者制度が追加されてきたわけです。

そこで相互に必ずしも一致しない部分もありますが、なるべく請負関係の上位にある事業者を規制の対象にしようとしてきたとはいえそうです。

しかし、直接使用している事業者の安全衛生措置義務はゆるぎないので、たとえ上位の注文者等に違反があった場合でも、一旦労働災害が発生したときの民事刑事の責任は元請業者にも及ぶおそれがあるということは注意しておくべきでしょう。

災害の被災者が直接使用している労働者でない場合であっても、労働安全衛生法違反の有無は労働災害発生とは関係がないので、法令順守についてはよく努力すべきでしょう。

【平成15年:事例研究より】

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