労働安全衛生法で定める労働災害防止

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労働安全衛生法に基づいた安全と健康の確保

労働安全衛生法は、労働災害の防止のための危害防止基準の確立、責任体制の明確化および自主的活動の促進の措置を講ずる等その防止に関する総合的計画的な対策を推進することにより職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進することを目的としています(1条)。

労働災害防止の取組みは労使が一体となって行う必要があります。

そのためには、安全委員会や衛生委員会などにおいて、労働者の危険または健康障害を防止するための基本となるべき対策について、十分な調査審議を行う必要があります。

安全委員会を設置しなければならない事業場(安衛法17条)
  1. 常時使用する労働者が50人以上の事業場で、次の業種に該当するもの

    林業、鉱業、建設業、製造業の一部の業種(木材・木製品製造業、化学工業、鉄鋼業、金属製品製造業、輸送用機械器具製造業)、運送業の一部の業種(道路貨物運送業、港湾運送業)、自動車整備業、機械修理業、清掃業

  2. 常時使用する労働者が100人以上の事業場で、次の業種に該当するもの

    製造業のうち(1)以外の業種、運送業のうち?以外の業種、電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業、各種商品卸売業・小売業、家具・建具・じゅう器等卸売業・小売業、燃料小売業、旅館業、ゴルフ場業

また、衛生委員会を設置しなければならないのは、常時使用する労働者が50人以上の事業場(全業種)です(安衛法18条)。

安衛法66条に基づいた健康診断

労働者の健康確保に関しては、安衛法66条に基づいて、労働者に対して医師による健康診断を実施しなければなりません。

また、労働者は、事業者が行う健康診断を受けなければなりません。

事業者に実施が義務付けられている健康診断
健康診断の種類対象となる労働者実施時期
雇入れ時の健康診断
(安衛則43条)
常時使用する労働者雇入れの際
定期健康診断
(安衛則44条)
常時使用する労働者
(特定業務従事者を除く)
1年以内ごとに1回
特定業務従事者の健康診断
(安衛則45条の2)
安衛則13条1項2号(※1)に掲げる業務に従事する労働者左記業務への配置替えの際、6月以内ごとに1回
海外派遣労働者の健康診断
(安衛則45条の2)
海外に6カ月以上派遣する労働者海外に6カ月以上派遣する際、帰国後国内業務に就かせる際
給食従事者の検便
(安衛則47条)
事業に附属する食堂または炊事場における給食の業務に従事する労働者雇入れの際、配置替えの際
※1  安衛則13条1項2号に掲げる業務
  1. 多量の高熱物体を取り扱う業務及び著しく暑熱な場所における業務
  2. 多量の低温物体を取り扱う業務及び著しく寒冷な場所における業務
  3. ラジウム放射線、エックス線その他の有害放射線にさらされる業務
  4. 土石、獣毛等のじんあい又は粉末を著しく飛散する場所における業務
  5. 異常気圧下における業務
  6. さく岩機、鋲打機等の使用によって、身体に著しい振動を与える業務
  7. 重量物の取扱い等重激な業務
  8. ボイラー製造等強烈な騒音を発する場所における業務
  9. 坑内における業務
  10. 深夜業を含む業務
  11. 水銀、砒素、黄りん、弗化水素酸、塩酸、硝酸、硫酸、青酸、か性アルカリ、石炭酸その他これらに準ずる有害物を取り扱う業務
  12. 鉛、水銀、クロム、砒素、黄りん、弗化水素、塩素、塩酸、硝酸、亜硫酸、硫酸、一酸化炭素、二硫化炭素、青酸、ベンゼン、アニリンその他これらに準ずる有害物のガス、蒸気又は粉じんを発散する場所における業務
  13. 病原体によって汚染のおそれが著しい業務
  14. その他厚生労働大臣が定める業務

また、次の有害な業務に常時従事する労働者等に対し、原則として、雇入れ時、配置替えの際及び6月以内ごとに1回(じん肺健診は管理区分に応じて1〜3年以内ごとに1回)、それぞれ特別の健康診断を実施しなければなりません。

特殊健康診断
  1. 屋内作業場等における有機溶剤業務に常時従事する労働者(有機則29条)
  2. 鉛業務に常時従事する労働者(鉛則53条)
  3. 四アルキル鉛等業務に常時従事する労働者(四アルキル鉛則22条)
  4. 特定化学物質を製造し、又は取り扱う業務に常時従事する労働者及び過去に従事した在籍労働者(一部の物質に係る業務に限る)(特化則39条)
  5. 高圧室内業務又は潜水業務に常時従事する労働者(高圧則38条)
  6. 放射線業務に常時従事する労働者で管理区域に立ち入る者(電離則56条)
  7. 除染等業務に常時従事する除染等業務従事者(除染則20条)
  8. 石綿等の取扱い等に伴い石綿の粉じんを発散する場所における業務に常時従事する労働者及び過去に従事したことのある在籍労働者(石綿則40条)
じん肺健康診断
  1. 常時粉じん作業に従事する労働者及び従事したことのある管理2又は管理3の労働者 (じん肺法3条、7〜10条)

    じん肺の所見があると診断された場合には、労働局に健診結果とエックス線写真を提出する必要があります。

歯科医師による健診
  1. 塩酸、硝酸、硫酸、亜硫酸、弗化水素、黄りんその他歯又はその支持組織に有害な物のガス、蒸気又は粉じんを発散する場所における業務に常時従事する労働者 (安衛則48条)
雇入れ時の健康診断 (安衛則43条)
  1. 既往歴及び業務歴の調査
  2. 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
  3. 身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査
  4. 胸部エックス線検査
  5. 血圧の測定
  6. 貧血検査(血色素量及び赤血球数)
  7. 肝機能検査(GOT、GPT、γ―GTP)
  8. 血中脂質検査(LDLコレステロール、HDLコレステロール、血清トリグリセライド)
  9. 血糖検査
  10. 尿検査(尿中の糖及び蛋白の有無の検査)
  11. 心電図検査
定期健康診断 (安衛則44条)
  1. 既往歴及び業務歴の調査
  2. 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
  3. 長(※2)、体重、腹囲(※2)、視力及び聴力の検査
  4. 胸部エックス線検査(※2)及び喀痰検査(※2)
  5. 血圧の測定
  6. 貧血検査(血色素量及び赤血球数)(※2)7 肝機能検査(GOT、GPT、γ―GTP)(※2)
  7. 血中脂質検査(LDLコレステロール、HDLコレステロール、血清トリグリセライド)(※2)
  8. 血糖検査(※2)
  9. 尿検査(尿中の糖及び蛋白の有無の検査)
  10. 心電図検査(※2)

※2:定期健康診断(安衛則44条)における健康診断の項目の省略基準定期健康診断については、以下の健康診断項目については、それぞれの基準に基づき、医師が必要でないと認めるときは省略することができます。なお、「医師が必要でないと認める」とは、自覚症状及び他覚症状、既往歴等を勘案し、医師が総合的に判断することをいいます。したがって、以下の省略基準については、年齢等により機械的に決定されるものではないことに留意してください。

医師が必要でないと認めると省略できる健康診断の項目
項目
医師が必要でないと認める時に左記の健康診断項目を省略できる者
身長
20歳以上の者
腹囲
  1. 40歳未満(35歳を除く)の者
  2. 妊娠中の女性その他の者であって、その腹囲が内臓脂肪の蓄積を反映していないと診断された者
  3. BMIが20未満である者(BMI(Body Mass Index)=体重(kg)/身長(m)2)
  4. BMIが22未満であって、自ら腹囲を測定し、その値を申告した者
胸部エックス線検査
40歳未満のうち、次のいずれにも該当しない者
  1. 5歳毎の節目年齢(20歳、25歳、30歳及び35歳)の者
  2. 感染症法で結核に係る定期の健康診断の対象とされている施設等で働いている者
  3. じん肺法で3年に1回のじん肺健康診断の対象とされている者
喀痰検査
  1. 1.胸部エックス線検査を省略された者
  2. 胸部エックス線検査によって病変の発見されない者又は胸部エックス線検査によって結核発病のおそれがないと診断された者
貧血検査、肝機能検査、血中脂質検査、血糖検査、心電図検査
35歳未満の者及び36〜39歳の者

安全衛生年間行事

全国安全週間は、労働災害防止活動の推進を図り、安全に対する意識と職場の安全活動のより一層の向上に取り組む週間です。

昭和3年に第1回が実施されて以来、一度も中断することなく続けられています。

職場における労働災害防止活動の大切さを再確認し、積極的に安全活動に取り組むことが求められています。

例年7月1日から実施され、その前月は準備期間として設定されています。

全国労働衛生週間は、働く人の健康の確保・増進を図り、快適に働くことができる職場づくりに取り組む週間です。

昭和25年に第1回が実施されています。
自主的な労働衛生管理活動の大切さを見直し、積極的に健康づくりに取り組むことが求められています。

例年10月1日から実施され、その前月は準備期間として設定されています。

安全衛生5s

安全衛生活動の基本となる以下の5つの要素を指します
  1. 整理
  2. 整頓
  3. 清掃
  4. 清潔
  5. しつけ

5sの徹底を図ると、職場をよく見るようになり、問題点などの顕在化が進んで、職場の安全性向上のほか、業務の効率化、不具合製品の流出の未然防止などの効果があります。

労働安全衛生を対象としたマネジメントシステム規格について、OHSAS (Occupational Health and Safety Assessment Series)18001は、ISO化されていませんが、国際的に広く採用されているようです。

建設業安全衛生

建設業や造船業においては、重層的請負契約のもとで、混在作業が行われている実態から、労働安全衛生法では、統括安全衛生管理責任(安衛法15条)、法15条1項の特定元方事業者として講ずべき措置(30条〜32条)が定められています。

30条では、以下の事項に関して必要な措置を講じるよう求めています。

特定元方事業者として講ずべき措置
  1. 「協議組織の設置・運営」:特定元方事業者と全ての協力会社が参加する組織で、毎月1回以上定期的に開催するもの(安衛則635条、平7・4・21基発267号の2)で、工程、作業間の連絡調整を行い安全対策を協議する、といったもの
  2. 「作業間の連絡・調整」:特定元方事業者と協力会社との間、および協力会社相互の間の作業について(安衛則636条)、毎日の工程と合わせて連絡調整を行うもの
  3. 「作業場所の巡視」:毎作業日につき1回以行い(安衛則637条)、連絡調整や指示事項の確認、法令違反の是正指示を適宜行うもの
  4. 「安全衛生に対する指導・援助」:協力会社が行う教育への場所や使用する資料の提供で(安衛則638条)、講師の派遣等もこれに含まれる
  5. 「計画の作成」:工程、機械・設備の配置、作業用の仮設建設物の配置に関する計画の作成(安衛則638条の3)
  6. 「労働災害防止のための必要な事項」
    • 土石流による危険の防止(安衛則575条の9〜16)
    • クレーン等の運転についての合図の統一(安衛則639条)
    • 事故現場等の標識の統一等(安衛則640条)
    • 有機溶剤などの容器の集積箇所の統一(安衛則641条)
    • 避難等の訓練の実施方法の統一等(安衛則642条の2、同2の2)
    • 周知のための資料の提供等(安衛則642条の3)などが挙げられます。

30条2項の前段では、発注者が仕事を2つ以上の元請負人に分割して発注した場合における複数の特定元方事業者の責任について規定しています。

どの特定元方事業者が作業間の連絡調整など安衛法30条1項の措置をすべきか、その責任者を決める必要があります。

このような場合、分割発注を受けた請負人の中から発注者が指名することになります。

一方、同条の後段では、発注者から仕事の全部を請け負った元請が、元請自身はその仕事をしないで、さらに2つ以上の下請に分割発注している場合に、統括安全衛生管理義務者を指名するは、発注者から仕事の全部を請け負った元請としています。

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