機械の騒音が激しいため難聴になったが、労災として取り扱われるか【平成16年:事例研究より】

トップ » 労災 » 労災とは

従業員が使用している機械の騒音がひどく、健康診断の結果、難聴と診断されました。

そこで、労災によるものではないかということで労災保険の請求の問題が生じました。

ところが、過去に当社ではそのような例がなく、どのように処理を行っていいか分からず困っています。

そのためお伺いした次第ですが、具体的には一体どのように処理したらよいでしょうか。

障害等級の認定基準も含めて教えてください。

【高知・T社】

機械の騒音がひどいために、その機械を使用していた従業員に難聴が生じたからといって、それが必ずしも機械の騒音に起因しているものかどうかは分かりません。

私生活の中でも騒音が生ずることもありますので、まず業務に起因した騒音性難聴かどうかを確認する必要があります。

そこで、騒音性難聴が業務に起因するものか否かの判断基準について厚生労働省労働基準局長の示している認定基準をみますと、概略以下のようになっています(昭61・3・18基発第149号)。

(1)騒音のばく露について、作業者の耳の位置における騒音がおおむね85db(A)以上である業務に、おおむね5年又はこれを超える期間従事した後に発症したものであること。

(2)病態について、1.鼓膜又は中耳に著変がないこと、2.純音聴力検査の結果が、感音難聴の特徴を示すことなどの一定の要件を示していること。

(3)内耳炎等による難聴でないこと。

原則として、以上の条件を満たせば、業務に起因した騒音性難聴であると判断されることとなります。

なお、騒音性難聴については、現在のところ有効な治療法がないので、療養補償給付の対象にはなりません。

ということは、療養のための休業もあり得ないので、休業補償給付もあり得ないという結論になります。

騒音職場にいる限り難聴は進行しますので、障害等級が決定し障害補償給付が行われるのは、騒音職場を離れたときということになります。

障害等級について 難聴には2つの面があります。

1つは、小さな音は聞きにくいという音の強さに対する感度が低下する面です。

いま1つは、音が聞こえるのですが、その意味が分からないという明瞭度が低下するという面があります。

難聴について障害等級を決定する場合には、以上の両面から判断されることになります(昭50・9・30基発第565号)。

騒音性難聴の場合には、聴力障害は一般的には両耳にきますので、その程度により次のように認定されます。

・両耳の聴力を全く失ったもの(第4級第3号)…両耳の平均純音聴力レベルが80デシベル以上のもの又は両耳の平均純音聴力レベルが50デシベル以上であり、かつ、最高明瞭度が30%以下のもの。

・両耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの(第7級第2号)…両耳の平均純音聴力レベルが70デシベル以上のもの又は両耳の平均純音聴力レベルが50デシベル以上であり、かつ、最高明瞭度が50%以下のもの。

・両耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの(第9級第6号の2)…両耳の平均純音聴力レベルが60デシベル以上のもの又は両耳の平均純音聴力レベルが50デシベル以上であり、かつ、最高明瞭度が70%以下のもの。

・両耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難な程度になったもの(第10級第3号の2)…両耳の平均純音聴力レベルが50デシベル以上のもの又は両耳の平均純音聴力レベルが40デシベル以上であり、かつ、最高明瞭度が70%以下のもの。

・両耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の小声を解することができない程度になったもの(第11級第3号)…両耳の平均純音聴力レベルが40デシベル以上のもの。

費用徴収等について 労災保険法第31条第1項第3号の規定により、事業主が法令に違反したために発生した労災に対して保険給付が行われる場合には、その給付額の30%相当額(昭47・9・30基発第643号)を都道府県労働局長が徴収する制度があります。

その点で「強烈な騒音を発する場所」に該当する場合には、労働安全衛生規則第595条(騒音障害防止用の保護具)の関係について、一応、違反がなかったかどうか調べておくとよいかもしれません。

【平成16年:事例研究より】