親会社で従業員身分(ただし管理職)の者が、子会社へ代表取締役として出向する場合があります。
代表取締役は労災保険の適用はなく、出向先子会社で業務上の災害を受けても、労災保険の補償はないということですが、出向元親会社には籍があり、従業員身分ですから、親会社の労災保険が適用されてよいと考えますが、いかがでしょうか。
【干葉・N社】
労災保険の保険給付の対象となるものは労働者です。
労働者とは、「労基法の適用のある事業に使用される者で、賃金を支払われる者」(労基法第9条)をいいます。
つまり、使用者と使用従属の関係にあって、その指揮命令を受けて労務を提供して、その対価として賃金を受ける者です。
「法人、団体、組合の代表者又は執行機関がる者の如く、事業主体との関係において使用従属の関係に立たない者は労働者ではない」(昭23・1・9基発第14号)とされ、また「法人の重役で業務執行権又は代表権を持たない者が、工場長、部長の職にあって賃金を受ける場合は、その限りにおいて労働者である」(昭23・3・17基発第461号)とされています。
法人を代表する代表取締役は、労働者といえず、労災保険給付の対象になりません。
出向元(親会社)では従業員身分であっても、出向先(子会社)では、代表取締役ですから、たとえ子会社で業務上の災害を受けても出向先での労災保険は適用されません。
出向先の労災保険が適用されないからといって、出向元の労災保険が適用されるということにもなりません。
出向元に従業員身分(雇用関係)があるといっても、実質的な労働関係はありませんので、親会社の労災保険は適用されません。
子会社へ代表取締役として出向する者については、たとえ子会社で業務災害を受けても、子会社、親会社いずれの労災保険でも保険給付を受けることはできません。
【平成4年:事例研究より】