外国人労働者が災害、不法就労者でも労災の適用があるか【平成4年:事例研究より】

トップ » 労災 » 労災とは

協力工場で外国人労働者を数人使用していたのですが、最近作業中に機械で負傷しました。

相当重傷ですので、協力工場としては労災保険を使用したいのですが、もし請求書を提出すると外国人労働者を使用していることが分かり、入国管理局等へ通報されるのではないかと心配しています。

担当者から相談を受けましたので、どうしたらよいか教えてください。

【埼玉・F機械】

外国人労働者であっても、労働基準法第8条の各号の事業に使用されていれば、不法就労かどうかに関係なく労災保険法が適用されることは当然です。

したがって、労災保険給付をきちんと請求するように指導したらいかがですか。

負傷の程度も相当重傷だということですから、協力工場で負担するのも大変です。

それに、なおった後に障害でも残ったりしたら高額の補償をしなければならなくなります。

協力工場でも労災保険料を納付しているのでしょうから、もったいないと思います。

労働基準監督署が入国管理局等へ通報することを心配されているのでしょうが、そんなことで被災者の災害補償が完全に行われないようなことになると大変です。

ご心配の監督署からの通報については、「外国人の不法就労等に係る対応について」という労働省労働基準局長と同職業安定局長名の連名通達(昭63・1・26基発第50号、職発第31号)が都道府県労働基準局長と都道府県知事あてに出されています。

それによりますと、労働関係法令違反がある場合の対処の仕方として、次のように指示しています。

(1)(省略)。

さらに、これら違反事案において、資格外活動、不法残留等入管法違反に当たると思われる事案が認められた場合には、出入国管理行政機関にその旨情報提供すること。

(2)上記のほか、業務遂行に当たって、資格外活動、不法残留等入管法違反に当たると思われる事案を承知した場合には、本来の行政目的に十分留意しつつ、事業主等関係者に対する注意喚起、指導等を行うほか、必要に応じ、出入国管理行政機関に情報提供するなど適切な対処に努めること。

(3)上記(1)及び(2)に言う出入国管理行政機関への情報提供は、職業安定機関でとりまとめの上行うものとすること。

ご質問の場合は、労災保険の請求書が提供されるわけですから、(2)の「業務遂行に当たって、外国人労働者の就労(不法かどうか存じませんが)が労働基準監督署に分かることになります。

この場合に、もし不法就労であったらどうなるでしょうか。

通達の(1)と(2)の文章を読んでみますと、両者は微妙に違っているようです。

すなわち(1)の方は「情報提供すること」と断定的ですが、(2)の方は「必要に応じ」と、いく分弾力的です。

その辺のところを考えてみたらいかがですか。

ご心配であれば国会両院の社会労働委員会の議事録に当たってみられるとよいと思います。

もし、ご心配で労災請求しないとしたらどんな問題が生ずるでしょうか。

まず、労災保険給付の請求をしないということについては何ら罰則はありません。

労災保険給付は、被災者側の請求により支給されるものですから(労災保険法第12条め8第2項)、請求しないからといって労使いずれも処罰されることはありません。

しかし、休業最初の3日間の休業補償を行わないと、使用者は労働基準法第76条違反となり6ヵ月以下の懲役または10万円以下の罰金に該当します。

また、労働安全衛生規則第97条の規定により、労働者が死傷したときには労働基準監督署長へ労働者死傷病報告を提出することになっています。

もし、提出しないと30万円以下の罰金に該当します。

新聞の報道によりますと、本年3月5日、川口労働基準監督署は東京都足立区にある「会社」と、その会社の「社長」を労働安全衛生法違反で浦和地方検察庁に書類送検したとあります。

送検された理由は、2年前の1月18日、川口市内の同社工場でパキスタン人男性がプレス機械で両手の人指し指と中指を切断したのを報告しなかったというものです。

この事故が監督署に分かったのは、同社が支払った補償費が少ないとして、被災者が増額を求めたために同社から監督署に届け出たことによるもののようです。

この例でお分かりいただけますように、慎重に取り扱うことが必要のようです。

もし、その協力工場が構内にあり、あなたの会社が労働安全衛生法でいう元方事業者に該当しているとしましたら、同法第29条により、協力工場に対して指導または指示義務がありますので十分注意する必要がありそうです。

【平成4年:事例研究より】