参加を強制していない競技会で職員が負傷、労災扱いはどうなる【平成4年:事例研究より】

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役所の出先機関の職員が親睦のための競技会を行っています。

民間の運動場を借用して開催しているのですが、その競技中に負傷者が出ました。

そこで、それが労災になるかどうか問題になっています。

競技会は数力所の出張所の職員の共催形式になっており、参加は強制ではありませんが、出勤扱いになっています。

このような場合には労災になるでしょうか。

【大阪・S自治体】

労災保険の認定基準労災保険の場合には、「運動競技会に出場中の労働者の被った災害にかかる業務上外の認定」について、労働省労働基準局長の通達(昭32・6・3基発第465号)が出されており、これは大変厳しい内容になっています。

すなわち、概要は次のとおりです。

1 事業を代表して対外的な運動競技会に出場中にこうむった災害 次の要件のすべてをみたす場合に業務上の災害となります。

(1)その運動競技会に労働者を出場させることが、事業の運営にとって社会通念上必要と認められること。

(2)労働者の出場が事業主の積極的特命によってなされたこと 2 同一企業に属する各事業相互の運動競技会に出場中にこうむった災害次の要件のすべてをみたす場合に業務上の災害となります。

(1)1の(1)に同じ。

(2)1の(2)に同じ。

3 事業内の運動競技会に出場中にこうむった災害 次の要件のすべてをみたす場合に業務災害となります。

(1)1の(1)に同じ。

(2)労働者の出場が、事業主より強制されていること。

負傷された職員の方が、非常勤職員であるため労災保険法の適用を受けている場合には、以上述べました認定基準により業務上外を判断されることになります。

ご質問によりますと、出勤扱いにはなっていますが出場は強制ではなく、おまけに主催者は事業主でなく職員のようですから、業務災害になるのは困難ではないでしょうか。

認定基準の中で関係があるのは2のようですが、それによっても業務災害というのは無理なようです。

地方公務員災害補償法の認定基準 被災された職員が常勤職員(勤務実態が常勤職員に等しい一定範囲の非常勤職員を含む)であれば、労災保険法でなく地方公務員災害補償法の適用があります。

この場合の認定基準は、地方公務員災害補償基金の理事長が示しています(昭48・11・26地基補第539号)。

内容は次のとおりで、労災保険法の場合と少し違っています。

認定基準によりますと、次のどれかに該当するレクリエーションに参加していて受けた災害は公務災害(業務災害と同じ)とされます。

1 地方公務員法第42条の規定に基づき、任命権者が計画し、実施したレクリェーション 2 任命権者が地方公務員等共済組合法に基づく共済組合若しくは職員の厚生福利事業を行うことを主たる目的とする団体で、、条例により設置され、かつ、地方公共団体の長等の監督の下にあるものと共同して行ったレクリェーション 3 任命権者の支配管理の下に行われたレクリェーション(この場合には、理事長に協議したうえで公務上外が認定されます) 右の基準については、基金の補償課長の詳細な解説文書が出されています(昭48・11・26地基補第542号)。

その文書によりますと、レクリエーションに参加している場合というのは、「所定の時間帯において当該レクリエーションに出場し、又は応援している場合をいい、準備運動を行っている場合及びこれに準ずる場合をも含むものであること」とされています。

労災保険法の場合と違って、少しゆるいような感じがしないでもありませんが、公務員の場合には支配服従の関係が民間の労使関係よりも強くて、参加することについて積極的な命令がなくても、事実上参加を強制されるのと同じだということでしょうか。

そこで、ご質問の件ですが、この基金理事長の認定基準から見ても公務災害と認定されることは困難ではないでしょうか。

ご質問にはありませんが、もし競技会の実態が3に該当するようなものであれば、一応、公務災害認定請求の手続きをとられてみたらいかがでしょうか。

理事長協議の結果、有利な認定が出るかもしれません。

とにかく、実態を再検討してみたらよいと思います。

【平成4年:事例研究より】