出張者は宿泊する旅館を自分で選択しているが、その旅館での災害は業務災害となるか【平成4年:事例研究より】

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当社では、出張中、出張先で宿泊を要する場合、宿泊先(旅館)を特に指定せず出張者の選択にまかせています。

当日の出張用務が終わり、宿泊する旅館などに行く途中、旅館などで宿泊中に被った災害は業務災害となりますか。

【東京O社】

出張とは、事業主の命により、特定の用務を果たすために、通常の勤務地を離れ用務地におもむいてから戻るまでの一連の過程をいいます。

出張中はその用務の成否や遂行方法などについて包括的に事業主に対する責任を負っており、事業主の支配を受けています。

したがって、特別の事情がない限り、出張の全過程について事業主の支配下にあり、業務遂行性があります。

出張中は、事業主の管理下を離れていますので、その間にさまざまな私的行為が行われますし、また出張の性質上ある程度の私的行為が介在することは、むしろ通常ありうることです。

これらは、出張した以上当然に出張に付随するものであり、一般に出張に伴う行為の範囲内であれば、業務遂行性が認められます。

その間の個々の行為(たとえば、食事、列車内で睡眠など)に際して発生した災害も、出張の範囲内のものである限り業務災害となります。

出張で旅館などに宿泊を要する場合、出張地の適当な場所に宿泊することについて事業主の支配を受けており、旅館へ行く通常の合理的な順路によっている限り、その途中の災害は業務災害となります。

このことは、事業主から特定の旅館を指定されている場合と、出張者が選択した旅館との差異があるものではありません。

旅館に宿泊中も業務遂行性は失われませんので、旅館の内部において通常の宿泊行為中の災害、たとえば、就寝中火災で焼死したとか、食中毒にかかったような場合には、業務災害になります。

しかし、泥酔して騷いだため階段から転落したとか、映画を見に行く途中で負傷した場合には、業務遂行性が失われており、業務災害とはなりません。

私的行為により自ら招いたものであるからです。

事業主から特定の旅館を指定されているにもかかわらず、自己の都合で他所に泊まったような場合には、業務遂行性が失われますが、指定がない場合には宿泊場所が問題になることはありません。

【平成4年:事例研究より】