じん肺管理3の社員が定年退職、障害補償給付を受給できるか【平成4年:事例研究より】

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近く定年を迎える労働者がいますが、会社の現場で長いこと粉じん作業に従事していました。

その結果、労働基準局長からじん肺管理区分の3として決定を受けています。

当然、肺の機能障害等があるので、労災保険の障害補償給付の手続きをしてやろうと考えています。

しかし、会社から管理3では障害補償給付をもらえないということを聞きましたが、いかがでしょうか。

【福岡・K鉱山労組】

じん肺管理区分の3は、「じん肺による著しい肺機能の障害がないと認められるもの」で、イと口に区分されています。

「著しい」肺機能障害がないということですから、著しくない肺機能障害はあるということになります。

では、労働省は、この著しくない肺機能障害の障害等級をどのように評価しているでしょうか。

そこで、労働省の障害等級認定基準(昭50・9・30基発第565号)を見てみますと、「じん肺による障害に係る等級は、心肺機能の低下の程度及びエックス線写真の像型等をもって」認定するとあります。

ところで、管理3のエックス線写真の像型は、イが第2型、口が第3型または第4型です。

それと、心肺機能の障害が中等度か、軽度か、それとも軽微かという組み合わせにより、次のように障害等級が認定されます。

・中等度の障害があり、第4型(大陰影の大きさが、一側の肺の2分の1以下)であるもの……第7級の5(胸腹部臓器の機能に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの)年金131日分 ・軽度の障害があり第4型であるもの……第9級の7の3(胸腹部臓器に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの)一時金391日分 ・中等度の障害があり、第3型であるもの……前に同じ。

・軽微な障害があり、第4型であるもの……第11級の9(胸腹部臓器に障害を残すもの)一時金223日分軽度の ・障害があり、第3型であるもの……前に同じ。

・中等度または軽度の障害があり、第2型であるもの……前に同じ。

なお、障害の程度については、換気指数によって次のように評価することになっています。

中等度……40〜60未満 軽度………60〜80未満 軽微………80以上 障害等級の認定については以上のとおりですが、では、障害の程度とエックス線写真の像型の組み合わせで、どれかの障害等級に該当していれば請求により障害補償給付が受けられるかというと、そう簡単には運びません。

その理由は、労災保険法第12条の8第1項第3号の障害補償給付は、同条第2項により、労働基準法第77条に規定する障害補償の事由が生じないと受けることができないからです。

そこで労働基準法第77条の規定を見ますと、障害補償の事由が生ずるものは、「労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり、なおったとき身体に障害が存する場合」とあります。

つまり、身体に障害が存するだけでは駄目で、「なおった」ことが必要です。

そして、なおったといえるためには、その前に療養という行為がなければなりません。

したがって、たしかに現在は心肺機能に障害があっても、療養ということがなければ障害補償給付を受けることはできません。

ところが、じん肺症により療養が必要とされるのは、じん肺法第23条の規定により、管理4と、管理4ではないが合併症にかかっていると認められた人だけです。

したがって、管理3であれば、合併症にかかってそのため療養を受け、それがなおれば、そのなおったときの状態に応じて障害補償給付が行われるということです。

この場合の合併症は、七ん肺法施行規則第1条により、管理2または管理3と決定された者のじん肺に合併した次の疾病に限定されることになります。

肺結核、結核性胸膜炎、続発性気管支炎、続発性気管支拡張症、続発性気胸 おそらく、会社の方が管理3では障害補償給付をもらえないといわれたのは、以上のことを考えてのことではないでしょうか。

もし納得がいかない場合には労働基準監督署の担当官によく話してみられたらいかがでしょうか(ちなみに、損害補償は別の問題になります)。

【平成4年:事例研究より】