嘱託で継続雇用を選択すると長期加入の利点消えるか【平成15年:事例研究より】

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昭和18年生まれで、今年の5月に60歳になります。

会社はもう1年嘱託で働くように勧めてくれるのですが、実は迷っています。

なぜかというと、私は中卒入社で、長期加入者の特例が適用されると聞いたからです。

他の60歳の人達と違って、せっかくフルの年金をもらえるのに、仕事を続けたら、どうなるのでしょうか。

【滋賀 G男】

昭和18年5月生まれの男性は、通常の場合、60歳、61歳の間は、満額の年金が出ません。

60歳代前半の老齢厚生年金の対象にはなりますが、最初のうち、報酬比例部分だけしか支給されないのです。

62歳に達した段階で、はじめて定額部分(十対象者がいれば加給年金も)の受給権が発生します。

しかし、ご指摘のように、特例で60歳から満額の年金(報酬比例部分十定額部分十加給年金)をもらえる人もいます。

優遇措置が認められるのは、 ・被保険者でなく、かつ障害等級3級以上の状態にある人 ・被保険者でなく、かつ被保険者期間が528ヵ月(44年)以上ある人 の2グループです。

全日制の高卒者が、60歳で年金の受給権を得るまでフルに厚生年金に加入していたとしても、加入期間42年弱しかありません。

ですから、長期加入者の特例に該当するのは、中卒者など一部の人に限られます。

勤務を継続した場合 特例該当者が、60歳に達した後も、引き続き嘱託として働き、厚生年金の被保険者資格も継続したとします。

この場合、年金はどうなるのでしょうか。

まず、特例の適用を受けるためには、障害等級3級以上または被保険者期間44年以上というだけでなく、「被保険者でないこと」という条件もクリアしないといけません。

このため、被保険者資格を保持している間は、たとえ特例の適用期間(表)中でも、一般の60歳代前半層と同様に、正規の年齢(62歳)に達するまで、報酬比例部分の年金しか受け取れません。

定額部分と加給年金は、支給停止という扱いです。

さらに、報酬比例部分には在職老齢年金の仕組みが適用され、最高でも8割の水準しか支給されません。

収入が高額だと、年金全額がストップするケースもあります。

要するに、特例のメリットは、すべて喪失して、他の高卒・大卒者等と同じ扱いになるということです。

しかし、必ずしも損だとはいえません。

満額の年金よりも、賃金収入と在職老齢年金を合わせた金額の方が、普通は多いはずですし、働き甲斐をどう考えるかは、個々人の価値判断の問題です。

もちろん、勤務時間を減らし、厚生年金の被保険者でなくなれば、在籍していても、満額の年金をもらえます。

61歳で退職した場合 嘱託期間1年が経ったところで、契約更新をせずに、退職したとします。

「被保険者でない」という条件を満たしますから、定額部分十加給年金の支給停止は解除されます。

したがって、他の人より早く、61歳からフルの年金を受け取ることができますが、この場合も、62歳まで働き続けた方が、収入金額としては多いことになるでしょう。

62歳になった後は、普通の人でも満額の権利があるのですから、再就職しても、何の問題もありません。

今度は、満額の年金を対象にして、在職老齢年金の仕組みが適用されます。

【平成15年:事例研究より】