雇用を継続したまま2、3年社員を海外派遣、雇用保険の適用はどうなる【平成4年:事例研究より】

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当社は外国にある企業と業務提携をし、外国へ支店を設け、その海外支店へ社員を派遣することとしました。

2、3年後に帰国させる予定でいますので、それまでの間は雇用関係は継続したままとしますが、このような場合、この者に対する雇用保険の適用はどう取り扱ったらよいのでしょうか。

【大阪U金属】

外国へ社員を派遣する場合にもいろいろなケースがあり、各企業のその取り扱いもさまざまだと思われますが、雇用保険の適用の面からみた場合、概ね次の4つの型に分けることができます。

1.外国へ出張して働く場合 2.国内の適用事業の事業主に雇用される者で、その事業主の海外の支社、支店、工場等に勤務するもの 3.国内の適用事業の事業主との雇用関係を残したまま、その事業主の下で雇用される者 4.国内の適用事業の事業主との雇用関係を終了させ、外国の企業に雇用される者 1.および2.の場合は、適用事業の事業主との間の関係は何ら変更されていないと考えられますので、被保険者資格は継続します。

ただし、日本の事業主が現地において採用する労働者は、日本の雇用保険の被保険者とはなりません。

3.の外国企業への出向の場合は、出向した労働者は海外の事業主と新たな雇用関係を結ぶことになりますが、その出向が国内の適用事業の事業主の命によるものであり、その事業主と雇用関係が存続している限り、すなわち在籍出向である限り外国の企業に勤務している間も引き続き被保険者として取り扱われます。

この場合にも、雇用保険に関する届出等の事務を行う必要がありません。

雇用保険においてこのような取り扱いを行っているのは、仮に派遣先の企業のある国において、その国の失業補償制度が適用されるとしても外国の失業給付はその国の外においては行われないのが通例であり、帰国後すぐに失業した場合などには給付を受けられない者がでてくるので、その保護の必要上これらの者の被保険者資格を継続させるものです。

4.の国内の適用事業の事業主との雇用関係を終了させて、外国の事業主と雇用関係を結んだ場合は、被保険者資格を喪失します。

ご質問のケースは上記の2.に該当すると解されますので、被保険者資格は継続することとなり、事務手続きは必要ありません。

また雇用保険の被保険者となる海外勤務者についての保険料や、その者が失業したときの基本手当日額の算定については、次のように取り扱われています。

すなわち、出向元の事業主から給与が支払われる場合には、その海外勤務に対して支払われる給与のうち、その者が国内勤務に服する場合に支給されるべき給与と同等の額を限度として保険料や基本手当日額め算定基礎となる賃金として取り扱い、海外勤務手当などが別に支払われている場合には、その超過額に相当する額については実費弁償的なものとして賃金とは認められません。

一方、在籍出向の場合であって、出向元から給与の支払いがない場合については、保険料の算定の基礎となる賃金額はゼロとなり、外国出向期間中はその者について保険料を支払う必要はありません。

また、出向元からの賃金の支払いがないとその被保険者が帰国して6ヵ月経過しない間に失業した場合など基本手当を受けるに当たっての受給資格が得られない場合があります。

その救済のため「事業主の命による外国における勤務」について、受給要件の緩和が認められています。

【平成4年:事例研究より】