資格取得届を3年間未提出、遡って確認を受けられるか【平成4年:事例研究より】

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このたび、労務の担当となり、雇用保険の手続きについて確認していたところ、ある従業員に係る雇用保険被保険者資格取得届の提出が洩れているこに気付きました。

雇入れてから約3年が過ぎていますが、これから届出を行っても、遡って被保険者となったことの確認を受けられるのでしょうか。

【大分・E鉄工所】

事業主は、雇入れた労働者が雇用保険の被保険者となる場合には、被保険者となった日の属する月の翌月10日までに「雇用保険被保険者資格取得届」(以下「資格取得届」といいます)を提出して、その者が被保険者となったことについて公共職業安定所長の確認を受けなければならないこととされています。

このように、公共職業安定所長が個々の労働者について、被保険者となったことを確認するとされているのは、被保険者が失業した場合に受ける基本手当等の受給資格の有無および給付日数等を決定するための基礎となる被保険者歴を確実に把握しておく必要があること等の理由によるものです。

この確認は通常、事業主からの届出、すなわち上述した資格取得届に基づいて行われますが、事業主が届出を怠っている場合などには、労働者がいつでも確認の請求をすることができることになっています。

さて、ご質問の場合のように、何らかの理由で資格取得届の提出が洩れ、所定の期間を徒過している場合の取り扱いですが、このような場合であっても資格取得届は受理し、過去に遡及して被保険者となったことの確認を行うこととされています。

この場合にも、被保険者となったことの事実(ご質問の場合は、雇用されたこと)のあった日を被保険者となった日とすることが原則です。

しかしながら、被保険者となった日が当該被保険者となったことの確認が行われた日の2年前の日より前であるときは、当該被保険者となったことの確認が行われた日の2年前の日を被保険者となった日とみなすこととされています。

したがって、例えば資格取得届の未提出者について、遡及して被保険者となったことの確認が行われた場合において、その者が3年前の4月1日から被保険者となっていたとしても、当該被保険者となったことの確認が行われた日の2年前の4月1日に被保険者となったとみなして取り扱われることになります。

これは、被保険者となったことの確認があった日より前の被保険者であった期間は、被保険者期間の算定の対象となる被保険者であった期間に算入されず(法第14条第3項第2号)、また基本手当の所定給付日数を決定するための基礎となる被保険者であった期間にも算入されない(法第22条第六項)こととされているからです。

このように、確認の日から2年だけ遡るのは、長期間にわたって遡ると被保険者であったことや賃金支払いの状況等を把握することが困難なこと、保険料の消滅時効が2年とされることなどの理由によるものです。

このように、事業主による資格取得届の提出が雇入れ後相当期間経過して行われた場合には、失業給付の支給内容等に影響する場合があります。

したがって事業主としては、被保険者となったことの確認を受けた場合には、公共職業安定所は雇用保険被保険者証(雇用保険被保険者資格取得確認等通知書を兼ねています)を交付しますので、必ずこれを当該確認に係る労働者に対して交付し、届出洩れが生ずることのないよう注意する必要があります。

【平成4年:事例研究より】