従業員がスポーツ中に重傷を負い、緊急治療後も再手術を受けるなど、今だに症状が固定しない状況です。
この先の対応ですが、症状が安定するのを待ってから、障害年金の申請を行うのがベターでしょうか。
あわてて低い等級に認定されると、本人が不利益を受けるのではないかと心配です。
【青森・W社】
障害等級の認定は、傷病が治った日、または初診日から1年6ヵ月を経過した日のいずれか早い日に行われます。
ご心配のように、症状が固定しない状態で等級認定をしても、すぐに状態が変わると予想されます。
一方、あまり長期間、認定を先延ばしにすると、従業員の生活に不安が生じます。
このため、治癒した日の認定を原則としながら、最長1年6ヵ月という期限を設けたものです。
1年6ヵ月が過ぎるまでは、健康保険から傷病手当金が出るため、それまでは障害厚生年金を支給しなくても、収入のメドは立つわけです。
紛らわしいのが、労災保険の扱いです。
労災保険では、障害等級の認定は、治癒するまで行われません。
その代わり、傷病補償年金という制度が設けられ、1年6ヵ月経過後に症状が固定していなくても、補償を受けられる休制を整えています。
厚生年金・国民年金にはそうした仕組みがないので、症状が安定していなくても、1年6ヵ月経過後には、必ず障害等級を決定します。
ですから、お尋ねの方の場合、1年6ヵ月間は事態を静観し、症状の固定がみられないなら、1年6ヵ月後で障害年金の申請をするという段取りを踏みます。
一度、障害等級が決まってしまうと、その後、症状が悪化した場合、本人に不利益が生じないか、というご質問ですが、障害年金には事後重症というシステムが組み込まれています。
年金を受け始めた後、症状が重くなったときの扱いですが、厚生年金法第52条では、救済の仕組みを2種類規定しています。
第1は、社会保険庁長官が、障害の程度を診査し、障害等級を改定するというもの。
もちろん、重い等級に改定する場合も、その逆もあり得ます。
第2は、受給権者自ら、社会保険庁長官に対し障害厚生年金の改定を請求するものです。
ただし、社会保険庁長官が障害等級を決定してから1年間は請求できません。
ですから、1年6ヵ月経過後に、年金の裁定請求をし、仮に3級と認定されたとします。
障害等級3級は厚生年金にしかありませんから、受け取れるのは3級の障害厚生年金だけです。
しかし、一定期間経った後、障害が悪化したときには、事後重症の認定を受けることができます。
そこで、障害等級が2級に改定されたとします。
そうすると、自動的に障害基礎年金の裁定も受けたことになります。
2級と認定された後は、2級の障害厚生年金・障害基礎年金の両方を受給できることになります。
【平成16年:事例研究より】